「夜間の暑さ」で院外心停止による緊急入院リスクが9%上昇

2026年11月2日 公開

全国11年間の入院データ解析で、昼間の暑さとは独立した関連を明らかに

ポイント

  • 全国の院外心停止による緊急入院データを解析し、昼間の暑さの影響を考慮しても、夜間の暑さによって緊急入院のリスクが9.0%上昇することを明らかにしました。
  • 2011年から2021年までの全国データを用いて解析した結果、特に北日本の75歳以上の高齢者や女性で、夜間の暑さに伴うリスクの上昇が大きいことが示されました。
  • 本研究成果は、昼間だけでなく夜間の暑さも心血管系の健康リスクと関連することを示しており、就寝時の適切な室温管理など、夜間の暑さ対策の重要性を示唆しています。

概要

東京科学大学(Science Tokyo) 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野の西村久明助教、藤原武男教授、地球環境医学分野の那波伸敏教授らの研究チームは、2011年から2022年までの全国の入院データを解析し、「暑い夜」にさらされることで、院外心停止による緊急入院のリスクが9.0%上昇することを明らかにしました。

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医療機関外で突然心臓が停止する院外心停止は、命に関わる緊急事態です。これまでにも暑さとの関連は報告されてきましたが、従来の研究では1日の平均気温や最高気温を暑さの指標として用いており、夜間の暑さに着目した研究はありませんでした。

本研究では、昼間の暑さの影響を考慮しても、夜間の暑さにさらされることで、院外心停止による緊急入院のリスクが高まる可能性が示されました。この結果は、昼間の暑さだけでなく、「夜間の暑さ」にも注意を払う必要があることを示しています。今後、気候変動に伴い、昼間だけでなく夜間の気温も上昇すると予想される中、夜間の暑さに対する予防策や対応を検討することの重要性が示唆されました。

本研究成果は10月23日付(現地時間)で国際科学誌「International Journal of Biometeorology」のオンライン版に掲載されました。

図1. 夜間の暑さにさらされたときの院外心停止による緊急入院のリスク。6日間のラグ期間を考慮し、ラグ0-6日における累積リスクと、ラグ別のリスクを示す。黒丸は相対リスクの推定値を、実線は95%信頼区間を示す。

背景

近年、日中の最高気温に比べ、夜間の暑さを反映する最低気温の上昇幅が大きい傾向にあることが報告されています。また、世界的にも、将来的に夜間の暑さが日中以上に強まる可能性が指摘されており、夜間の暑さが健康に及ぼす影響を明らかにすることは、気候変動対策における喫緊の課題となっています。

医療機関外で突然心臓が停止する院外心停止は、生命に関わる緊急事態です。これまでにも、暑さへの暴露によって院外心停止のリスクが高まることが報告されてきました。しかし、従来の研究では、暑さの指標として1日の平均気温や最高気温などを用いており、夜間の暑さが及ぼす独立した影響に着目した研究はありませんでした。

そこで本研究では、昼間の暑さの影響を考慮した上で、夜間の暑さと院外心停止による緊急入院のリスクとの関連を明らかにすることを目的としました。

研究成果

本研究では、2011年から2021年までの11年間について、年間で気温が高い5ヵ月間(5月から9月)における日本全国の院外心停止による緊急入院データを用い、夜間の暑さとの関連を検討しました。入院データは診断群分類(Diagnosis Procedure Combination: DPC)データベースから抽出し、気温データには気象庁の観測データを使用しました。夜間の暑さは、都道府県ごとに、日最低気温が過去30年間の上位7.5%に相当する気温を超えた日と定義しました。解析では、昼間の暑さの影響を統計的に調整するとともに、気温の影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)も考慮しました。

その結果、昼間の暑さの影響を考慮しても、夜間の暑さにさらされることで、院外心停止による緊急入院のリスクが9.0%上昇することが明らかになりました(95%信頼区間:4.7%〜13.5%)。

さらに、地域、年齢、性別による違いを解析したところ、北日本に居住する高齢者や女性で、特に高いリスクが認められました。北日本に居住する75歳以上の高齢者では29.5%上昇(95%信頼区間:11.7%〜50.0%)、女性では35.2%(95%信頼区間:14.5%〜59.6%)のリスク上昇が認められ、夜間の暑さに対する影響が地域や年齢、性別によって異なる可能性が示されました。

社会的インパクト

本研究により、夜間の暑さへの暴露が、院外心停止による緊急入院のリスク上昇と関連することが示されました。今後、気候変動の進行に伴い、日中だけでなく夜間の暑さにも注意を払い、適切な情報提供や注意喚起を行うことの重要性が示唆されました。

今後の展開

本研究結果を説明するメカニズムの1つとして、夜間の暑さによる睡眠リズムの乱れや、それに伴う循環器系への負荷の増大が考えられます。今後は、夜間の暑さが院外心停止のリスクを高める仕組みを解明するとともに、効果的な予防策についても検討していく必要があります。

付記

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(JP23K19768、JP25K20594)および地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS:国立研究開発法人科学技術振興機構[JST、JPMJSA2402]・独立行政法人国際協力機構[JICA])の支援を受けて実施されました。

論文情報

掲載誌:
International Journal of Biometeorology
タイトル:
Association between nighttime heat exposure and emergency hospitalization for out-of-hospital cardiac arrest: A time-stratified case-crossover study in Japan
著者:
Hisaaki Nishimura, Nobutoshi Nawa, Kiyohide Fushimi, Takeo Fujiwara

研究者プロフィール

西村 久明 Hisaaki Nishimura

東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 助教
研究分野:公衆衛生学、環境医学

那波 伸敏 Nobutoshi Nawa

東京科学大学 医歯学総合研究科 地球環境医学分野 教授
研究分野:環境医学、疫学、プラネタリーヘルス、小児科学

藤原 武男 Takeo Fujiwara

東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 教授
研究分野:公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)

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