極端な暑さで急性腎障害による緊急入院リスク2倍に

2026年10月26日 公開

全国9年分の入院データから、気温の影響と年齢・性別による違いを明らかに

ポイント

  • 日本全国の2011~2019年の入院データを解析し、極端な暑さと寒さのいずれも、急性腎障害による緊急入院のリスクを高める可能性を明らかにしました。
  • 急性腎障害による緊急入院のリスクは、極端な暑さで2.21倍、極端な寒さで1.24倍となりました。さらに、暑さの影響は働く世代の男性で、寒さの影響は高齢者で大きいことが示されました。
  • 本研究の成果は、極端な暑さや寒さが予想される際の急性腎障害の予防や医療提供体制の整備に加え、年齢や性別に応じた注意喚起や予防策の重要性を示しています。

概要

東京科学大学(Science Tokyo)医歯学総合研究科 地球環境医学分野のアイペリ・アサンベク・キジ(Aiperi Asanbek Kyzy)博士後期課程学生、那波伸敏教授、および公衆衛生学分野の藤原武男教授らの研究チームは、2011年から2019年までに収集された全国規模の入院データを解析し、暑さや寒さへの曝露が、急性腎障害による緊急入院のリスクを高める可能性があることを明らかにしました。

急性腎障害は、脱水やその他の身体的ストレスなどをきっかけとして、腎臓の働きが急激に低下する病態で、短期的にも長期的にも重篤な健康影響をもたらすことがあります。しかし、日々の暑さや寒さといった気象要因が、急性腎障害による入院リスクにどのような影響を及ぼすかについては、これまで十分に明らかになっていませんでした。

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本研究では、極端な暑さと寒さのいずれも、急性腎障害による緊急入院のリスクを高める可能性が示されました。これらの結果から、暑さや寒さへの曝露を減らすための対策を講じることや、極端な気温が予想される際に医療提供体制を整えることの重要性が示唆されました。

本研究成果は、10月20日付(現地時間)に「Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology」に掲載されました。

図1. (a)14日間のラグ効果を考慮した日平均気温パーセンタイル[用語1]と気温と急性腎障害による緊急入院リスクとの関連。実線は各気温における相対リスクを示し、灰色は95%信頼区間を示す。
(b)極端な暑さ(各都道府県における1日の平均気温の上位1%に相当する気温)と極端な寒さ(各都道府県における1日の平均気温の下位1%に相当する気温)における、急性腎障害による入院リスク。黒丸は相対リスクを示し、実線は95%信頼区間を示す。

背景

急性腎障害は、脱水やその他の身体的ストレスなどをきっかけとして、腎臓の働きが急激に低下する病態で、短期的にも長期的にも重篤な健康影響をもたらすことがあります。近年、こうした急性腎障害の発症リスクに、気象要因が関与する可能性が注目されています。一方、日々の暑さや寒さといった気温への曝露が、急性腎障害による入院リスクに及ぼす影響について検討した研究は限られていました。

そこで本研究では、日本全国を対象に、気温と急性腎障害による緊急入院との関連を調べるとともに、その関連が年齢や性別によって異なるかどうかを検討しました。

研究成果

2011年から2019年までの9年間にわたり、日本全国の入院データを用いて、高温および低温への曝露と、急性腎障害による緊急入院リスクとの関連を検討しました。入院データは診断群分類(Diagnosis Procedure Combination: DPC)データベースから抽出し、気温データには気象庁の情報を用いました。また、気温への曝露から影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)を考慮して解析しました。

その結果、極端な暑さと極端な寒さのいずれも、急性腎障害による緊急入院のリスクを高める可能性が示されました。極端な暑さ(各都道府県における1日の平均気温の上位1%に相当する気温)にさらされた場合、入院リスクは2.21倍に上昇することが分かりました(95%信頼区間:2.00〜2.43倍)。また、極端な寒さ(各都道府県における1日の平均気温の下位1%に相当する気温)にさらされた場合、入院リスクは1.24倍でした(95%信頼区間:1.09〜1.40倍)。

さらに、暑さや寒さの影響には、年齢や性別による違いがみられました。極端な暑さでは、入院リスクが15〜49歳の男性で4.24倍、50〜64歳の男性で4.20倍となり、特に働く世代の男性でリスクが高いことが分かりました。一方、極端な寒さでは、65歳以上でリスクが高く、性別にみると、男性では1.87倍、女性で1.28倍でした。

社会的インパクト

本研究により、暑さだけでなく寒さも、急性腎障害による緊急入院のリスクを高める可能性が示されました。この結果は、暑さや寒さによる健康影響への対策を進めるうえで、腎臓への影響についても考慮する必要があることを示しています。

暑さや寒さへの曝露をできるだけ減らすための対策に加え、極端な暑さや寒さが予想される際には、急性腎障害による緊急入院の増加を想定し、医療提供体制を整えることも重要です。また、暑さへの注意喚起では働く世代の男性を、寒さへの対策では高齢者を重点的な対象とするなど、年齢や性別に応じた予防策や情報発信が有効である可能性があります。

今後の展開

暑さや寒さによる急性腎障害のリスクに年齢差や性差が生じる背景について、生物学的要因に加え、職業上の曝露、生活環境、社会的要因なども含めて検討する必要があります。

また、極端な暑さや寒さの際に、特定の年齢層や性別を対象とした予防策や注意喚起を行うことが、実際に急性腎障害の発症や、それによる緊急入院の減少につながるかどうかを検証していくことも重要です。

付記

本研究は、日本学術振興会(JSPS、JP23K19768)と国立研究開発法人科学技術振興機構(JST、JPMJSA2402)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の連携事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の支援を受けて実施されました。

用語説明

[用語1]
日平均気温パーセンタイル:ある日の平均気温が、その地点における過去の長期的な気温データの中で、どの程度の位置にあるかを示す統計指標。

論文情報

掲載誌:
Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology
タイトル:
Association between ambient temperature and acute kidney injury: a nationwide space-time-stratified case-crossover study in Japan
著者:
Aiperi Asanbek Kyzy, Hisaaki Nishimura, Nobutoshi Nawa, Kiyohide Fushimi, Takeo Fujiwara

研究者プロフィール

アイペリ・アサンベク・キジ Aiperi Asanbek Kyzy

東京科学大学 医歯学総合研究科 地球環境医学分野 博士後期課程学生
研究分野:公衆衛生学、環境医学、腎臓内科学

那波 伸敏 Nobutoshi Nawa

東京科学大学 医歯学総合研究科 地球環境医学分野 教授
研究分野:環境医学、疫学、プラネタリーヘルス、小児科学

藤原 武男 Takeo Fujiwara

東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 教授
研究分野:公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)

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