東京科学大学(Science Tokyo)は、政府が推進する宇宙戦略基金事業の技術開発テーマの1つである「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点"SX-CRANE"」において、本学の関根康人教授と藤田浩二教授が研究代表者を務める2拠点について、契約が締結されたことをお知らせします。宇宙戦略基金は、内閣府、文部科学省、経済産業省、総務省が推進し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が事務局を務めています。
今回の"SX-CRANE"公募では、約10倍という高倍率の中、全国5拠点のうち2拠点を本学が占める結果となりました。とりわけ、医療・医学の視点を取り入れた研究拠点が選定されたことは、本学の医歯理工連携の強みを象徴するものです。
宇宙転用・新産業シーズ創出拠点"SX-CRANE" 2拠点
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「有人火星時代に向けた環境センサ・小型ペイロード開発拠点」
- 研究代表者:関根康人教授
- 委託費:22億円(最長8年間)
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「宇宙での医療と一体化した居住空間開発拠点」
- 研究代表者:藤田浩二教授
- 委託費:22億円(最長8年間)
- 金額は支援上限額であり、今後ステージゲート評価等により変動することがあります。また、委託事業期間は、委託金交付決定日から、最初のステージゲート評価が終了する日の属する年度の末日までとなります。
東京科学大学では、「善き未来」の実現に向けた分野横断型の新研究体制「Visionary Initiatives(VI:ビジョナリーイニシアティブ)」を推進しています。その中の1つであるSpace Innovation「宇宙と生命の真理を探究し、宇宙生活圏を開拓する」は、医療(生活・健康)、環境(計測・制御)、資源(探査・利用)という異なる領域が相互に補完し合うことで、宇宙における持続的な生活基盤の構築を目指す取り組みです。
本VIでは、今回の拠点に加え、第一期(探査)で採択された「テラヘルツ波リモートセンシング衛星による⽉地下浅部の資源探査(代表研究者 笠井康子)」などとも連携し、宇宙における「資源・環境・医療」を統合的に扱う「宇宙関連コンソーシアム(仮)」の設立(2026年9月頃)を検討しています。これにより、産学官連携による新たな研究・産業基盤の構築を目指します。
また、本学の医歯理工連携の強みを背景に、宇宙で「安心・健康に暮らす」ための研究開発が本格的に始動しています。
東京科学大学は今後も、宇宙・医療・工学の融合による新たな価値創出を通じて、「善き未来」の実現に貢献してまいります。
有人火星時代に向けた環境センサ・小型ペイロード開発拠点(関根教授)
火星時代を見据えた環境センシング技術で安心・健康に暮らす
関根教授のプロジェクトでは、将来の有人火星探査に向けて、宇宙環境を高精度に把握するためのセンサ技術および小型ペイロードの開発を推進します。
極限環境下におけるデータ取得・解析技術は、宇宙探査にとどまらず、地球環境のモニタリング、防災、資源探査など、多様な分野への波及効果が期待されます。
本拠点の産学連携について
本研究では、島津製作所、Midtown、岩谷技研などの企業に加え、東北大学、東京大学、大阪公立大学などの大学・研究機関と共同で研究開発を進めます。
各機関が有する、南極や成層圏、深海、海上などの極限環境で活用されているセンサ・デバイス技術を宇宙向けに小型化・耐環境化・省電力化し、人類が火星や月へ到達する前段階における環境計測の実現を目指します。
関根康人教授コメント
火星で地球以上の精度の天気予報を行うことや、地下に眠る水や鉱物資源を探査すること、さらに、火星上の水・大気・岩石から酸素、水素、燃料、農業肥料を生み出すことを目指しています。加えて、現在も存在する可能性がある火星生命を検出するためのデバイス開発にも挑戦したいと考えています。
10年後、火星に初めて降り立つ宇宙飛行士が、私たちが開発したデバイスを装備している—そのような未来の実現を目指しています。
宇宙での医療と一体化した居住空間開発拠点(藤田教授)
宇宙医療の常識を変える「医療一体型居住空間」
藤田教授のプロジェクトでは、「医療と居住空間を一体化する」という新たな発想に基づき、宇宙における自律型健康管理システムの構築を目指します。
宇宙空間では、「いかに病気を防ぐか」「いかに異常の予兆を早期に検知するか」が重要となります。本研究では、熟練した医療者が持つ暗黙知を可視化・定量化する技術を応用して、居住空間そのものを診断装置として機能させる「アナログサイト」を構築し、身体状態を常時・非侵襲的にモニタリングする技術の開発を進めます。
本拠点の産学連携について
連携企業であるNECは、各種センサのデータを統合し、健康状態の把握と適切な介入を行うAI基盤を開発します。竹中工務店と東京理科大学は、宇宙居住空間を模した地上実験設備を構築し、センシング技術と介入手法を検証します。日本スポーツ振興センターは、トレーニング科学の知見を活かし宇宙トレーニングを体系化し、量子科学技術研究開発機構と物質・材料研究機構は、量子センサの基盤技術を担います。Midtownは、出口戦略の設計・運営を主導し、社会実装までを一気通貫で取り組みます。
本研究では、民間企業との共同研究を通じて、研究成果の社会実装を加速させます。従来の大学研究は、新たな発見や理論の実証にとどまりがちでしたが、東京科学大学では、研究成果の社会実装を重要な目標の1つに位置づけています。そのため、研究の初期段階から企業研究者と連携して取り組むことが重要であると考えています。
藤田浩二教授コメント
これまでの宇宙医学研究は、宇宙飛行士が安全に宇宙で生活できるようにすることを主な目的としてきました。しかし、私たちは空間そのものを医療の視点で捉え、疾患の予兆を早期に検知し、予防・介入・治療までを一体的に行うシステムの構築を目指している点で大きく異なります。
こうした技術は、地球上の医療にも大きく貢献することが期待されます。例えば、医療過疎地における居住空間の開発や遠隔医療への応用、AIを活用した医療の省力化、さらには医療とトレーニングの統合などへの展開が考えられます。
研究者プロフィール
関根 康人 Yasuhito Sekine
東京科学大学 未来社会創成研究院 教授
研究分野:惑星科学
藤田 浩二 Koji Fujita
東京科学大学 医療イノベーション機構 医療デザイン室 教授
研究分野:AI医療、デジタルヘルス、未来医療システム、整形外科、手外科
笠井 康子 Yasuko Kasai
東京科学大学 環境・社会理工学院 教授
研究分野: 地球惑星リモートセンシング、電磁波伝搬、科学イノベーション政策