栄誉教授 白川英樹先生のご逝去に寄せて

2026年9月3日 公開

東京科学大学理事長 大竹尚登より

本学(旧東京工業大学(東工大))の卒業生、栄誉教授であり、2000年ノーベル化学賞の受賞者である白川英樹先生の突然の訃報に接し、深い哀悼の意を表します。

白川先生は旧東工大 資源化学研究所(現総合研究院 化学生命科学研究所)の教員を長年務められる中で、大岡山キャンパスの研究室にて「電気を通すプラスチック」として注目されたポリアセチレンフィルムの作製に初めて成功されました。この成果が後の導電性高分子の発見と発展へとつながり、2000年のノーベル化学賞受賞へと結実いたしました。

白川先生は、人材育成にも大変熱心でいらっしゃいました。旧東工大の教育改革に伴い2016年に開講された「科学技術の最前線」の授業で、是非ご講演いただきたいという私たちの願いを先生は快く聞き入れてくださり、その後、東京科学大学となっても学士課程1年生全員への授業を継続してくださいました。毎年授業内容の改善に努められ、さらに授業後も学生からの質問に丁寧に応える白川先生のお姿を忘れることはありません。

白川先生の本学への多大なご貢献に感謝申し上げますとともに、本学一同、先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

東京科学大学学長 田中雄二郎より

白川英樹先生の突然の訃報に接し、心より哀悼の意を表します。

先生の偉大なご業績につきましては、申し上げるまでもありません。加えて、学長として強調したいのは、先生が本学の学生にとってどのような存在であったかということです。

年に一度、1時間の講義と30分の質疑応答のために、先生はご多忙のなか教鞭を執ってくださいました。講堂は常に満席となり、立ち見の学生が壁際に並ぶほどでした。そこで先生が語られたのは、研究成果の解説だけではなく、学問にどう向き合うかという姿勢でした。入学して間もない学生たちが、身じろぎもせず聴き入っていた光景が深く心に残っています。

かつて先生は、大学に欠かせないものとして「優れた教員がいること」「図書館があること」そして「優れた仲間がいること」の3つを挙げられました。AIによってあらゆる知識に瞬時に到達できる今、大学は何のために在るのかが問われています。人が同じ場に集い、問いを交わし、知の蓄積に自ら分け入る—大学の価値の核心を、先生は静かに示してくださいました。

先生の講義を聴いた学生一人ひとりの中に、その姿勢は生き続けるものと信じております。長きにわたるご指導に深く感謝し、謹んでご冥福をお祈りいたします。

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