東京科学大学(Science Tokyo)は、白川英樹氏(1966年 旧東京工業大学 大学院理工学研究科 化学工学専攻修了/筑波大学 名誉教授)、一條秀憲氏(東京科学大学 特別栄誉教授)、狩野方伸氏(1982年 旧東京医科歯科大学 医学部卒業/帝京大学 特任教授)、小山二三夫氏(東京科学大学 名誉教授・特任教授)に栄誉教授の称号を授与することを決定しました。6月9日に大岡山キャンパスで、田中雄二郎学長から4氏に称号記が授与されました。
栄誉教授の称号は、本学教授、退職者、卒業・修了生のうち、ノーベル賞や文化勲章、文化功労者、日本学士院賞など教育研究活動の功績をたたえる賞もしくは顕彰を受けた者に対して授与されるものです。
白川英樹氏は、従来は電気を通さないとされていたプラスチックに着目し、ポリアセチレンに臭素やヨウ素などを微量に添加(ドーピング)することで電気伝導度が大幅に増大し、金属に匹敵する導電性を示すことを明らかにしました。この成果により「導電性高分子」という新しい研究分野を切り拓き、電子材料やエネルギー分野などへの応用基盤を確立するなど、材料科学の発展に大きく寄与しました。これらの功績により、2000年にノーベル化学賞を受賞し、文化功労者に選出されるとともに文化勲章を受章しています。
一條秀憲氏は、細胞が受けるさまざまなストレスに応答する分子機構の研究を牽引し、特に1997年にアポトーシス(細胞死)を誘導するタンパク質リン酸化酵素ASK1を発見しました。その後、ASKファミリーが酸化ストレスや小胞体ストレス、浸透圧ストレスなどの環境変化に応答する仕組みを解明するとともに、その破綻が筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経変性疾患やがん、炎症など多様な疾患に関与することを明らかにしました。この一連の研究成果は生命科学および創薬研究の発展に大きく貢献したことから、2019年に紫綬褒章を受章し、2021年には日本学士院賞を受賞しています。
狩野方伸氏は、神経回路の活動依存的機能調節に関する研究を進め、小脳におけるシナプス可塑性の分子機構の解明に貢献するとともに、さまざまな脳部位において、神経活動により内因性カンナビノイド(マリファナ類似物質)が放出され、シナプス後部から前部へ逆行的に作用して神経伝達物質の放出を抑制する機構を明らかにしました。さらに、発達期小脳における登上線維とプルキンエ細胞の間のシナプス刈り込みが活動依存的に制御される分子機構の研究を通じて、神経回路形成の基本原理の解明に大きく貢献しました。これらの功績により、2015年に紫綬褒章を受章し、2023年に日本学士院賞を受賞しています。
小山二三夫氏は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)の実現および性能向上と応用展開に関する研究を長年にわたり推進してきました。伊賀健一氏(東京科学大学 栄誉教授)との共同研究により、1988年に室温連続発振の実現に成功し、その後の実用化の道を切り拓きました。さらに、光通信やデータセンタ、センシングなど幅広い分野への応用にも大きく貢献しています。これらの功績により、2026年に日本学士院賞を受賞しています。
4氏はそれぞれの分野において卓越した研究成果を挙げ、学術の発展と社会への貢献に大きな足跡を残してきました。これらの功績をたたえ、このたび4氏に栄誉教授の称号が授与されました。
後列左から若林則幸理事・副学長、高田潤一執行役副学長、波多野睦子理事・副学長、井村順一理事、井上光太郎理事、森尾友宏理事・副学長、関口秀俊執行役副学長、古川哲史理事・副学長