科学の力で世界を牽引する大学へ

2025年10月1日 公開

統合1周年を迎えたScience Tokyoの飛躍と未来を語る、理事長・学長の展望

(左)大竹 尚登 理事長 (右)田中 雄二郎 学長

科学の力を信じ、科学の力で善き未来を創っていく

理事長 大竹 尚登

2024年10月、「科学」の名を冠する新大学が船出しました。先の見えない時代だからこそ、私たちは「科学」の力を信じ、科学によって善き生活、善き社会、善き地球を実現し、善き未来をつくっていきたいというビジョンを掲げ、その実現のための人材を育成していきます。

世界トップクラスの大学を目指すにあたり、大学運営については、基盤と独自の2つの階層に分けて考えています。まず基盤階層においては世界標準のガバナンス体制を構築し、すべての構成員に対して、高度な多様性、公平性、包摂性を実現するため、誰もが自由でフラットにものが言える環境を整備していきます。独自階層においては、これまでの実学に立脚した教育研究をさらに発展させていくとともに、国内外の大学と広く連携し、世界最高水準の研究体制を整え、私たちの手で研究者を育成しつつ、世界水準の研究者にも数多く来ていただきたいです。

そして私自身は経営の長である理事長として、大学が社会に貢献するために何をすべきか、優れた人材を育成するためには何が必要か、シンプルで大胆な施策を打ち出していきたいと考えています。

先進的なビジョン駆動型の融合研究

具体的なアクションの一つに、多様な研究分野と研究ステージを包括したビジョン駆動型の融合研究、通称「Visionary Initiatives (VI:ビジョナリーイニシアティブ)」の導入があります。これは、社会課題解決の先にある“善き未来”の実現を目指すため、ディシプリン(専門分野)横断型の研究・教育を全学的に実践する体制です。2025年8月現在は6つのVIに約360人の研究者が参画しており、さらに新たなVIの設置を検討しています。今後は学内すべての研究者と、国内外の大学や企業からの研究者がVIに参加することで、研究と教育の高度化を図ります。さらに、VIを基盤とした社会的インパクトを創出することによって、日本や世界に貢献できる成果を生み出すことを掲げています。

また将来的には、VIの成果を具体的に昇華させる国際医工共創研究院(医工研)などのプラットフォームを介した、国内外のステークホルダーと共創するグローバルイノベーションエコシステムの駆動も視野に入れています。国内においては四大学未来共創連合(お茶の水女子大学、東京外国語大学、東京科学大学、一橋大学)を中心とした大学との連携など、国外においてはインペリアル・カレッジ・ロンドン(英)、アーヘン工科大学(独)、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバードに加え、アジアを中心とするパートナー大学、VIのビジョンを共有する大学との間で、研究者採用や学生交流、産学連携などを促進。開かれた大学として、世界のあらゆるステークホルダーとの連携、共創の可能性を探っていきます。

Science Tokyoを貫く3つのEsprit(真髄)

Science Tokyoの前身である東京工業大学と東京医科歯科大学が創設以来続けてきたのが、「新産業と新医療の創出」です。また常に両大学は「先端研究を通じた教育」を軸としてきました。さらに、東京医科歯科大学はコロナ禍において国内最大数の重症患者を受け入れたほか、東京工業大学は東日本大震災における原発事故以降、復旧に向けての技術的な支援を続けるなど、私たちは「危機に立ち向かう姿勢」を貫いてきました。これら3つのEsprit(エスプリ・真髄)を Science Tokyoにおいても大切にしながら、次なる世界を切り拓いていきたいと考えています。

大竹 尚登
東京科学大学 理事長
1992年東京工業大学 博士(工学)取得。2010年同大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻教授に就任。2022年同大学科学技術創成研究院長に就任。2024年10月より現職。専門は機械材料学、機能性薄膜。

知の循環と交流から融合科学を基盤とするイノベーションを起こしていく

学長 田中 雄二郎

気候変動、自然災害、貧困、感染症、国際紛争など、今、私たちの社会はあまりにも多くの課題を抱えています。これらの課題を現代のゼロサムな社会(限られたパイを奪いあう競争型社会)で解決していこうとすれば、どうしても格差や分断が生じてしまいます。ですから私たちはまず、ポジティブサムな社会(社会全体の利益の総和が増える社会)の方向に変えていかなければなりません。それを実現するのがイノベーションです。私たちScience Tokyoには、数々の社会課題を解決するためにも、さまざまな分野でイノベーションを創出していく使命があると考えています。

教育研究組織の長である私としては、教員、学生、医療関係者、技術職員、事務職員、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)などすべての構成員において、知が循環し、交流し、混ざり合う環境を作っていきたいと考えています。イノベーションの創出にはそうした環境こそが欠かせません。さらにそのイノベーションを人々の幸せに真に貢献するものにするためには、研究の早い段階から実社会ともつながりを持ち、その声を聞き、協働していく必要があります。そんな、社会に開かれた大学を創っていけたらと考えています。

自律と協調から生まれる知の循環

大竹理事長が描く法人全体のフレームワークに沿って、私が学長として大学組織を作り、動かしていくわけですが、その際に私が重視するのは「自律と協調」です。大学を構成する各人が自律と協調を実現してこそ、知は円滑に循環し交流できます。この文化を育むとともに、その実現に向けた組織を作らなくてはなりません。

そのために立ち上がったのが、多分野での先進的な研究を推進する総合研究院、未来社会に向けて革新的な研究を行う未来社会創成研究院、産業界と組織的な連携を行い、共同研究や博士人材育成を推進する新産業創成研究院の3つの組織です。さらに、2025年に4つ目の研究院として創設されたのが国際医工共創研究院です。共創と実装のプラットフォーム(基盤)として病院をフル活用できるほか、「知の交差点」として、医歯学系・理工学系の研究者が同一空間で最初から協働して研究に取り組む環境を実現しています。医歯学と理工学との掛け合わせによる新たな医療技術の革新が生まれることが期待されます。

イノベーションの担い手となる博士人材を育成

工学×医学で「手術ロボット」が創られ、理学×医学で「新薬」が創られる。理学×工学や、医学×歯学のさらなる組み合わせも考えられる。細かな枠組みを取り去ることで、各学問領域における自由な連携や融合が可能になるのです。

イノベーションの担い手となる博士人材を積極的に育成していきたいとも考えています。そのために、産業界とのネットワークを活用しながら、社会とともに博士を育成する仕組みを確立したいです。人材獲得については、特に国際化と起業に関わる戦略が必要です。具体的には、アクティビティの高い海外大学と包括協定を結び、学部生・大学院生や研究者の交換を密に行っていきます。博士によるスタートアップを支援する仕組みの構築や、企業と大学を自由に行き来できる体制も作っていけたらと考えています。ここから近い将来、あっと驚くイノベーションが誕生するでしょう。ご期待ください 。

田中 雄二郎
東京科学大学 学長
1985年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)取得。2001年同大学医学部附属病院総合診療部教授に就任。2020年同大学長に就任。2024年10月より現職。専門は消化器内科学、医学教育学。

Science Tokyoについてのアンケートのご報告

対話と共創のためのステークホルダー継続調査

Science Tokyoでは、理念にも掲げている「社会とともに新たな価値を創造する」ことを実現するために、社会の声に耳を傾け、社会とともにScience Tokyoブランドを育てていくことを大切にしています。その一環として、Science Tokyo設立1周年を迎えるにあたり、本学学生、教職員、卒業生、連携する企業、受験生、一般生活者の皆さまを対象に、本学の認知やイメージついての調査を実施しました。本調査結果は我々の今後の活動の指針としていきます。調査にご協力いただいた多くの方々に、心より御礼申し上げます。

調査の結果、本学の一般生活者の方からの認知率は約50%ということが分かりました。設立してまだ間もない大学ではありますが、今後、社会の皆さまに認知され、世界中から信頼される大学になっていきたいと思います。

また、「先進的な研究」や「産業の発展に貢献」といったイメージを多くの方に持っていただいていることが分かりました。今後は、先進的な研究や産業界への貢献に加え、社会課題解決への貢献、グローバル大学のイメージなど世界最高水準の大学としてさまざまな取り組みを行っていきたいと考えています。

最後に本学の呼称「Science Tokyo」は、学生・教職員や卒業生では9割以上の方に認知されている一方、学外の方にはまだ浸透途上であることも分かりました。これから「Science Tokyo」という呼称が多くの方に自然と使われ、広がっていくよう、私たちも積極的に発信していきます。ぜひ皆さまにも、この呼称を覚えて日常の中で使っていただければと思います。

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