東京科学大学(Science Tokyo)は、2024年度入試から理工学系学士課程の総合型・学校推薦型選抜に「女子枠」を順次導入し、これまで3年度にわたり入試を実施してきました。導入の趣旨と、現時点で確認している状況を説明します。
女子枠導入の基本的な考え方
本学は、多様な背景、知識、経験や考え方を持つ学生が共に学ぶことが、教育・研究を豊かにし、すべての学生に新たな可能性をもたらすと考えています。一方、本学理工学系では、女子学生が長年にわたり少数にとどまってきました。女子中高生向けイベントや出張講義、理科教室、学生寮・奨学金の整備などを進めてきましたが、女子学生比率に大きな変化は見られませんでした。
そこで、理工学分野への進学を希望する女子学生に本学を進路の一つとして積極的に考えてもらい、著しい男女の偏りを改善するため、ポジティブ・アクション(男女共同参画社会基本法に定める積極的改善措置)の一つとして女子枠を導入しました。さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から、2029年度以降の留学生受入れ拡大に向けた新たな入試制度も検討しています。
募集人員と選抜方法
女子枠の導入前の2023年度入試では、一般選抜 930 人、総合型・学校推薦型選抜 98 人を、2026年度入試では、一般選抜 813 人、総合型・学校推薦型選抜 255人(うち女子枠は 154 人)としました。総合型・学校推薦型選抜の一般枠は、性別を問わず出願できます。
一般選抜と総合型選抜では、試験の構成、配点、評価する観点が異なります。一般選抜の最終判定は、本学が実施する 750 点満点の個別学力検査の得点に基づきます。総合型選抜は、学院により 100 点から 240 点満点で、大学入学共通テスト、総合問題・個別テスト、志望理由書、調査書、活動実績報告書等を用い、学力、適性、意欲などを多面的・総合的に評価します。
このため、異なる選抜区分の得点を同一の尺度として直接比較することはできません。本学は、各選抜区分であらかじめ公表した方法と基準に基づき、厳正に合否を判定しています。募集人員に満たない場合でも、各学院が定める水準に達しない受験生を、人数を満たすために合格させることはありません。
現時点における検証状況
本学は、2024年度から2026年度までの志願・合格状況や女性比率、入学後の成績、取得単位数、進級状況等と選抜方法との関係を分析しています。導入後の期間は短く、最初の対象者でも入学後約2年半、理学院・工学院は2025年度からの導入であるため、現時点の結果は対象期間と対象者数を踏まえて解釈する必要があります。
両選抜に共通する大学入学共通テストの成績では、2025年度は最低点・平均点とも総合型選抜女子枠合格者が一般選抜合格者を上回り、2026年度は最低点が同程度、平均点は女子枠合格者が上回りました。これは一つの指標による比較であり、受験者集団や選抜方法も異なるため、両選抜の成績を総合的に比較するものではありません。
入学後の修学状況についても、女子枠合格者と一般選抜合格者との間に差は確認されていません。対象者数が限られ、個人が推測される可能性もあるため、現段階では詳細な数値の公表を控えています。
女子学生の割合と志願状況
女子枠導入後、理工学系の女子学生の入学者比率は 10.7%から 22.5%に、在籍者比率は 13.1%から 16.9%に上昇しました。一般選抜における女子志願者の割合も14.6%から 16.4%に増加しています。ただし、これらの変化には広報・啓発活動や社会全体の動向など複数の要因が関係するため、女子枠との直接的な因果関係は断定せず、継続して分析します。
今後の検証と制度の見直し
今後も、選抜区分別の志願・合格・入学状況、女性志願者・合格者の割合、入学の修学状況、学修環境、入試制度全体への影響、理工学分野へ進学する女性の裾野の拡大などを検証します。
制度設計時には、設定した募集規模により女子学生の入学者比率が 20%を超える見込みであると説明しましたが、これは達成目標や終了条件ではありません。本学が目指すのは、女子枠に依存しなくても、多様な女子学生が継続的に本学理工学系を志望し、入学する環境が形成されることです。その実現状況を重要な観点として制度の必要性と妥当性を定期的に検証し、募集人員の変更、縮小または終了を含め、制度のあり方を見直します。
本学の姿勢
Science Tokyoは、さまざまなご意見に耳を傾けながら、すべての受験生に対する説明責任を果たし、公正かつ多面的な入学者選抜を実施してまいります。同時に、多様な学生が互いに学び合い、一人ひとりが安心して能力を発揮できる教育・研究環境の整備に取り組んでまいります。