東京科学大学(Science Tokyo)は3月13日、大岡山キャンパス蔵前会館ロイアルブルーホールおよびオンラインのハイブリッド形式で、基礎研究機構の2025年度成果報告会を開催しました。
本報告会は、基礎研究機構が支援する若手研究者たちの挑戦と成果を広く共有し、研究者間の交流を深めることを目的としています。会場参加とオンライン参加を合わせて150人を超える参加者が集まり、専門基礎研究塾および広域基礎研究塾による熱のこもった活動報告が行われ、分野の垣根を越えた活発な議論の場となりました。
第1部 セミナー
第1部は、宍戸厚機構長による開会の辞から始まり、井村順一理事(総合戦略担当)よりあいさつがありました。
井村理事は、広域基礎研究塾の5期生であった自身の研究室の助教が、基礎研究機構の支援による海外派遣を経て大きく羽ばたいたエピソードを紹介し、若手研究者を激励しました。また、自身がプログラムオフィサーを務めるJST創発的研究支援事業での経験から、「異分野融合」と「横のつながり」の重要性を改めて実感していると述べ、基礎研究機構の場を足掛かりにして挑戦してほしいと呼びかけました。
続いて、大竹尚登理事長によるセミナー「東京科学大学の基礎研究と若手への期待」を行いました。大竹理事長は、国際卓越研究大学として新たにScience Tokyoが目指す方針や、ビジョン駆動型組織を志向する背景とともに、若手研究者への期待を語りました。
「学問の自由は最大限尊重します。やりたい研究ができなくなることはなく、研究の機会を増やすことはあっても奪うことはありません。自分の好きなことに挑戦し続けてください。そのうえで、参画したVI(Visionary Initiatives)のビジョンを時々見つめて、自身の研究とのつながりを意識していただきたい。ビジョンと研究が一見関係ないように思えても、URAやエコシステムビルダーなどの専門人材が接点を見つけるかもしれません。助教のうちに、10年以上先を見据えた長期的テーマを立ち上げ、創造的な活動に専念してほしいと思います」と、若手研究者へ力強いメッセージを送りました。
第2部 専門基礎研究塾活動報告
第2部では、専門基礎研究塾長3人(大隅良典塾長、西森秀稔塾長、鈴木啓介塾長)と塾生2人による活動報告が行われました。
大隅塾長は、若手が自主的に企画・運営するコロキウム(研究会)が、教員からの呼びかけがなくとも毎回多数の参加者を集め、研究者同士が活発に質問を交わす素晴らしい活動へと成長していることを報告しました。
西森塾長は、基礎研究から始まった量子アニーリングの最適化技術が広く社会で活用され、起業など多様な人材の輩出につながっていることの意義を語りました。
鈴木塾長からは、オンラインで世界とつながる「サルーン(酒場)」のような自由闊達な学びの場として、若手が困ったときに頼れる寺子屋的な塾にしていきたいとの展望が示されました。
塾生2人は、専門基礎研究塾での活動を通じて得た大きな気づきや経験について語りました。科学的な知見の共有にとどまらず、トップレベルの研究者たちとフラットに議論できる環境の価値や、研究がうまくいかないときの裏話や苦労話を直接聞くことで励まされたエピソードなどを紹介し、専門基礎研究塾が研究者としての姿勢を学べるかけがえのない場であることが参加者の間で共有されました。
第3部 広域基礎研究塾活動報告
続く第3部では、広域基礎研究塾の穐田宗隆塾長からの総括に続き、計8人の塾生(8期生2人、修了生2人、グループ研究2人、海外派遣2人)による活動報告が行われました。
穐田塾長は、広域基礎研究塾の今年度の活動内容紹介、アンケート結果、修了生の動向調査の報告に加え、今後の展望を語りました。これまでの理工系中心のプログラムに医歯学系を本格的に取り込むための調整を進め、分野間の相互理解をさらに深めていきたいとの意気込みを示しました。
塾生からは、広域基礎研究塾での活動がいかに自身の成長につながったか、自身のテーマやキャリアパスにどのような影響を与えたかなどについて、経験をもとに多角的な視点から報告がありました。
異分野の仲間やトップレベルの研究者との交流を通じて「自分がやりたい研究」や「自分にしかできない研究」を再確認できたことや、塾生間で学生指導の悩みを分かち合えたことが語られました。また、海外派遣活動を通じて新たな研究の種を発見したことや、塾での出会いが実際に共同研究へと発展した事例の紹介がありました。
最後に、古川哲史執行役副理事(総合戦略担当)より閉会のあいさつがありました。古川執行役は「本質的なクエスチョンを持つことが大事です」と語り、自身も過去にじっくりと研究テーマを考える期間を持てたことで、結果として大きな発見や論文発表につながったというエピソードを披露しました。
「基礎研究機構が提供する環境を生かして、テーマを考える取り組みをぜひ大切に継続してほしい」と古川執行役は締めくくり、成果報告会は盛況のうちに幕を閉じました。
ポスター発表
成果報告会終了後に行われた学内限定のポスター発表会場では、ポスターを前に熱心な議論が交わされました。このイベントは、新しい交流がより活発に進む絶好の機会となり、今後の基礎研究機構の展開やScience Tokyoの将来について意見を交わす場となりました。