2025年度「大隅良典基礎研究賞」を3人が受賞

2026年3月4日 公開

大隅良典記念基金による3人への基礎研究賞を授与

東京科学大学(Science Tokyo)は、40歳未満の若手研究者に対し基礎研究の資金を支援する「大隅良典基礎研究賞」の2025年度授賞式を2月5日にすずかけ台キャンパスで開催しました。

受賞者との記念撮影
(前列左から加藤一希准教授、野上純太郎助教、大隅良典栄誉教授、大竹尚登理事長、河西通助教)

本賞は、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授からの寄附をもとにScience Tokyo(旧・東京工業大学)が設立した「大隅良典記念基金」を原資に、2018年度に立ち上げられました。本支援は長期的な視点が必要な基礎研究分野における若手研究者支援を目的として研究費の支援を行います。前身の「大隅良典基礎研究支援」から数えて第8回目となる2025年度は36人の応募があり、3人が採択されました。
※本賞は、2025年度より医歯学系に支援範囲を広げて実施しています。

授賞式では、3人の受賞者に対して大竹尚登理事長から本学の基礎研究賞の取り組みについての説明の後、大隅栄誉教授より祝辞がありました。また、受賞者と大隅栄誉教授・本賞関係者を交えた懇談が行なわれ、受賞者の現在取り組んでいる研究テーマ等について活発な意見交換がなされました。

大隅栄誉教授・本賞関係者との懇談の様子

2025年度「大隅良典基礎研究賞」受賞者

野上 純太郎 物質理工学院 応用化学系 助教

研究課題:分子歪みを克服する革新的ナノカーボン不斉構築法とキラル機能開拓

有機分子では、電子が分子全体に広がる「π共役」と呼ばれる性質が、発光特性や生理活性など多様な機能を生み出す重要な役割を果たし、有機ELや有機半導体、医薬品など幅広い分野で利用されています。その代表例が、ベンゼン環が連なったナノカーボン分子です。近年、このナノカーボンの形状を平面から曲げたりねじったり変形することで、物性が大きく変調し、新しい機能が現れることが分かってきました。しかし、剛直なπ共役分子の形を歪ませるとエネルギー的不利を受けるため、従来では複雑な立体構造を作ることが困難でした。本研究では、分子内部に「架橋構造」を巧みに導入することで、分子骨格を精密に変形させる新しい合成手法を確立し、湾曲やねじれをもつ三次元的なナノカーボン分子の創製を目指します。さらに、こうした立体構造に由来するキラル特性や分子の動的挙動といった革新的物性を明らかにすることで、有機材料化学への基礎的貢献を目指します。

河西 通 生命理工学院 生命理工学系 助教

研究課題:ゼブラフィッシュ胚発生における細胞外マトリクスの運搬を介した形態形成機構

私たちの体は、細胞が集まってできているだけではありません。細胞の外側には「細胞外マトリクス」と呼ばれる高分子の網目構造があり、細胞が移動するときの足場になったり、増殖や分化の合図を伝えたりすることで、組織づくりを支えています。これまで細胞外マトリクスは固定された構造だと考えられてきましたが、近年、胚の中で細胞外マトリクスがダイナミックに動く現象が報告され始めています。しかし、その動きがどのような役割を持つのかはまだ明らかになっていません。そこで本研究では、私たちが最近見出した、体節の周囲を取り巻く細胞外マトリクスの配置が時間とともに変化する現象に着目します。体節は将来、体幹の筋肉をつくるもとになる重要な構造です。本研究では、体節の周囲で細胞外マトリクスがどのように移動するのかを調べ、配置の変化が筋肉の形づくりに果たす役割を明らかにします。これにより、体の立体的な形が秩序立って作られる発生原理の解明につなげます。

加藤 一希 総合研究院 免疫機構研究ユニット テニュアトラック准教授

研究課題:プロテアーゼ型 CRISPR-Cas 酵素による多様な抗ウイルス防御戦略の解明

CRISPR-Cas 機構は原核生物のもつ獲得免疫機構であり、ファージウイルスに対する感染防御機構として働きます。私たちは、東京湾に生息する硫酸還元菌Desulfonema ishimotonii からプロテアーゼ活性を示すCas酵素としてCas7-11:Csx29 複合体を発見しました。本研究では深海微生物のゲノムサンプルから未知のCas7-11:Csx29を同定することに挑戦します。それらの機能を詳しく調べることで、プロテアーゼ型CRISPR-Cas 酵素を介した多様な抗ファージ防御戦略の解明を目指します。

大隅良典記念基金

大隅良典栄誉教授が2016年、「オートファジーの仕組みの解明」によりノーベル生理学・医学賞を受賞したことを機に、将来の日本を支える優秀な人材を育成するため、経済的支援が必要な学生が本学で学ぶための修学支援(奨学金)並びに長期的な視点が必要な基礎研究分野における若手研究者支援の推進など、研究分野の裾野の拡大を目的として設立しました。
「基礎研究支援」は大隅栄誉教授が、若い人がチャレンジングな課題に取り組める環境整備や次世代を担う研究者の育成支援について要望したことに基づき発足しました。本賞は「大隅良典基礎研究賞」と名称を変え、2023年度からさらに幅広い支援を行っています。
Science Tokyoは、大隅良典記念基金をさらに充実させるため寄附を受け付けています。

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