室温で緑色だけでなく、紫~オレンジ色にも光る新しい半導体材料を発見

2026年1月23日 公開

緑色がうまく光らない理由に挑み、新しい半導体材料の指針を示した研究

どんな研究?

夜の交差点では、信号機の色が青から赤へと切り替わり、あなたが持っているスマートフォンの画面は、指先の操作に応じて鮮やかな光を放ちます。屋根の上では、太陽電池が太陽光を受け取り、黙々と電気を生み出しています。

この「光と電気をつなぐ」役割を担っているのが半導体です。半導体を使って作られた装置の中には、電気を流すと光を出すLEDもあれば、光を受け取って電気を生み出す太陽電池もあります。

ところが、光を出す半導体材料の世界には、長年解決できていない難題がありました。赤色や青色の光はうまく出せるのに、緑色だけはどうしても効率よく光らせることが難しかったのです。研究者たちはこの壁を「グリーンギャップ」と呼び、何十年も挑み続けてきました。

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一方、太陽電池にも課題がありました。性能の高い材料は知られていましたが、高価だったり、毒性のある元素を含んでいたりして、広く使うには問題がありました。もっと安全で、もっと自由に使える材料はないのか、というのが研究者たちの共通の悩みでした。

ここが重要

これらの課題を克服するために、東京科学大学(Science Tokyo)の平松秀典(ひらまつ・ひでのり)教授らの研究チームが注目したのは、これまで光電子材料の主役とは見なされてこなかった「スピネル型」と呼ばれる結晶構造です。

一般には「光らない」と思われていたこの構造を持つ結晶について、原子の並び方と電子の動きから根本的に見直しました。その結果、特定の元素の組み合わせを選べば、光らないスピネル型結晶でも光を効率よく出せる結晶材料に変えられることを突き止めました。さらに、成分を少し入れ替えるだけで、発光の色を緑色だけでなく、紫色からオレンジ色の領域まで広く制御できることを実証しました。

さらにこの材料では、電気の流れ方そのものを制御できることも明らかになりました。電子が主役になる状態と、正の電荷が主役になる状態を作り分け、電気の流れやすさを10億倍以上も変えられることを示しました。つまり、太陽電池やLEDを作るうえで避けて通れない「電気の流れの制御」を、この新しい材料一つで担える可能性を示したのです。

今後の展望

この成果は、長年の壁だった高効率な緑色LEDを実現する鍵になります。照明やディスプレイの省エネ化が進めば、私たちの生活の風景も変わるでしょう。

同時に、光を受け取って電気に変える性質を生かせば、次世代型太陽電池への応用も期待されます。また、毒性の高い元素を使わないため、環境にもやさしいデバイス開発につながる可能性があります。

研究者のひとこと

本研究は、当研究室の半沢幸太助教が中心となって、約5年間、共著者全員で粘り強く取り組んだ結果、ようやくまとめることができました。できないと思われている性能であっても、物質の本質をよく見て、必要な細工さえしてあげれば、それが実現可能な材料は必ず見いだせると思っています。

(平松秀典:東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所/元素戦略MDX研究センター 教授)

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