どんな研究?
マイクロプラスチックよりさらに小さい、ナノプラスチックを知っていますか。ナノプラスチックは、1マイクロメートル未満の非常に小さなプラスチック片です。1マイクロメートルは、わずか1ミリメートルの1,000分の1です。
海や川などの環境中に広がっていると考えられ、水生生物や人体への影響も懸念されています。しかし、小さすぎるため、実際にどこにどれだけ存在するのかを調べることは簡単ではありません。たとえば、マイクロプラスチックは光学顕微鏡などで調べられますが、ナノプラスチックは小さすぎて、従来の方法では簡単に見つけることができません。
そこで、東京科学大学(Science Tokyo)の當麻真奈(とうま・まな)准教授らの研究グループは発想を変えました。採取した試料を詳しく分析してナノプラスチックを探すのではなく、ナノプラスチックを最初から捕まえようという発想です。
研究グループが注目したのは、ポリスチレンという種類のプラスチックに結合する、タンパク質の短い断片であるペプチドです。このペプチドを利用して、ポリスチレン製のナノプラスチックを検知するセンサーの開発に挑戦しました。
ここが重要
研究グループは、このペプチドをセンサー表面に固定し、ナノプラスチックが結合すると光の反射が変わる仕組みを利用した新しいセンサーを開発しました。その結果、直径50ナノメートルのポリスチレン粒子を、複雑な分析作業を行うことなく20分以内に検出できることを実証しました。
さらに、光の反射の変化を測定するだけでなく、電子顕微鏡を使って、ナノプラスチックが実際にセンサー表面に付着していることも確認しました。これにより、センサーが想定した仕組みで働いていることを示しました。
今後の展望
今回のセンサーは、不純物の少ない実験室の水だけでなく、さまざまな物質が含まれる水槽や池の水を用いた試験でも機能することを確認しました。実際の環境では水質によって検出感度が変わるなど、まだ解決すべき課題はありますが、今後の改良が進めば、環境中のナノプラスチックをより手軽に調べる技術につながることが期待されます。さらに将来は、生体試料など、より複雑な試料への応用も考えられています。
研究者のひとこと
この研究を始めたきっかけは、ペットボトルなどに使われるPETを分解する細菌が日本国内のリサイクル工場で発見されたという報告に興味を持ったことでした。生体内では特定の分子を見つけて結びつく生体分子がたくさん働いていますが、この細菌は、人工物であるPETを分解する酵素を持っていることが報告されています。この発見から着想を得て、私たちはプラスチックに吸着する性質を持つ生体分子を、ナノプラスチックを捕捉し検出するセンサーに利用できないかと考えました。非常に小さなナノプラスチックは捕集や分析が難しいのですが、生体分子を使って捕捉することでナノプラスチックを検出するセンサーを作ることができました。
(當麻真奈:東京科学大学 工学院 電気電子系 准教授)
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