リヨン第1大学、ケンブリッジ大学、ヒューストン大学、ソウル大学の研究者がScience Tokyoを訪問

2025年9月19日 公開

2025年7月および8月に、世界有数の大学に所属する4名の研究者が、World Research Hub (WRH) プログラムの支援を受けて東京科学大学に招聘され、共同研究を開始しました。

Illa Tea

クロード・ベルナール・リヨン第1大学教授
東京科学大学 特定教授

受入教員:物質理工学院 山田桂太准教授

共同研究テーマ:自然存在比の安定同位体を用いたがん代謝の理解と予測の高度化

フランスのクロード・ベルナール・リヨン第1大学のIlla Tea教授は、東京科学大学 特定教授として、物質理工学院の山田桂太准教授と共同研究を進めています。両者は、がん細胞の代謝をより深く理解し、将来的な予測手法の構築を目指して、新たな分析技術の応用に取り組んでいます。
本研究では、「位置特異的同位体分析(PSIA)」と呼ばれる手法を用いて、分子内の安定同位体比を詳細に測定します。例えば、炭素原子を3つ含むアラニン分子において、炭素13と炭素12の比率を原子の位置ごとに分析することが可能です。Tea教授と山田准教授は、健常細胞とがん細胞から抽出した特定分子を比較し、それぞれの同位体比の違いを検出することで、がん細胞の生存・増殖メカニズムの解明を目指しています。
本プロジェクトは、PSIA手法に関する山田准教授の専門性と、同位体分析を人の健康に応用するTea教授の知見を融合させたものであり、がん研究に新たな視点をもたらすことが期待されています。

左から 吉田尚弘事務部門長(地球生命研究所(ELSI))、Illa Tea特定教授、山田桂太准教授

Michiel Sprik

ケンブリッジ大学 名誉教授
東京科学大学 特任教授

受入教員:総合研究院 化学生命科学研究所 佐々木遼馬助教
連名教員:総合研究院 化学生命科学研究所 館山佳尚教授

共同研究のテーマ:蓄電池に関する界面電気化学の理論計算研究

総合研究院の佐々木遼馬助教と館山佳尚教授は、ケンブリッジ大学Michiel Sprik名誉教授と共同研究を行っています。
本研究では、佐々木助教と館山教授の計算・データ科学手法とSprik名誉教授の理論電気化学の知見を融合させ、バッテリーの界面におけるイオン及び電子移動の新たな一般理論構築を目指しています。この理論的枠組みは、電池の性能と効率を向上させる材料開発に貢献するものであり、カーボンニュートラル社会の実現に向けて極めて重要な役割を果たします。
今後、佐々木助教および研究室メンバーは、ケンブリッジ大学を訪問し、現地の研究者との連携を通じて更なる共同研究の発展を進める予定です。

左から館山佳尚教授、Michiel Sprik名誉教授(ケンブリッジ大学)、佐々木遼馬助教

Randall Lee

ヒューストン大学 教授
東京科学大学 特任教授

受入教員:総合研究院 フロンティア材料研究所 Tso Fu Mark Chang准教授

共同研究テーマ:有害有機化合物の浄化に向けた磁性触媒の開発

ヒューストン大学のRandall Lee特任教授は総合研究院のMark Chang准教授と協力し、環境問題の重要な課題である有害化学物質の廃水からの除去に焦点を当てた磁性触媒材料の作成に取り組んでいます。この研究では、汚染物質の分解に高い効果を持つだけでなく強い磁気特性も備えた材料の開発を目指しています。磁性を持つことで、処理後の水から触媒を効率的に回収・再利用でき、二次汚染を防ぐことが可能になります。この共同研究の成果として、総合研究院とヒューストン大学College of Natural Sciences and Mathematicsの間で連携協定と覚書 (MOU)が締結されました。

左から曽根正人教授、Randall Lee特任教授、秋山泉(WRH Team)、Mark Chang准教授、Charles DaSallaリーダー(WRH Team)

Eung Soo Kim

ソウル大学(SNU) 教授

受入教員:総合研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 相樂洋教授

共同研究テーマ:人工知能および高性能計算による複合災害進展解析と防災の最適化研究

ソウル大学のEung Soo Kim教授は、総合研究院の相樂洋教授との共同研究で、大規模災害への対応を最適化するための高度なシミュレーションツールを開発しています。両者は物理ベースのモデリングと人工知能、高性能計算を組み合わせることを目指しており、洪水や原子力事故、パンデミックなどの災害がどのように拡大するかをより深く理解できるようにします。複雑なデータを統合しAIで予測精度を高めることで、本研究は国や地方自治体に対しリスク評価と緊急対応の改善に役立つ強力な資源を提供します

左から Eung Soo Kim教授(ソウル大学)、相樂洋教授

World Research Hub (WRH) プログラムについて

WRHプログラム海外研究者招聘は、世界トップの研究者を招聘するための経費や事務手続きの支援により、個々の研究者交流をベースとした国際連携の開始とその深化・拡大を進めること、また世界トップの研究者との交流の機会を本学の若手研究者・学生に提供することを目的とした事業です。

更新履歴

  • 2025/09/24 - キーワードとリンクを追加

国際支援センター 国際化支援室 WRH Program Team
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主催:リサーチディベロップメント機構