InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム 第7回公開シンポジウム「エネルギー・医療 新産業創成に向けて」を開催

2026年3月10日 公開

東京科学大学(Science Tokyo)InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム(ISE)は1月16日、東京科学大学蔵前会館くらまえホールにおいて、第7回公開シンポジウムを開催しました。

年に一度開催する公開シンポジウムは、ISEの理念と活動を広く一般に報告する機会として位置づけられています。第7回となる今回は「エネルギー・医療 新産業創成に向けて」をテーマに開催し、学内外から多くの参加者に来場いただきました。エネルギーと医療の融合を軸に、将来ビジョンから新しい価値を開拓し、どうすれば新産業を創出して社会実装できるか、議論を深めました。

開会あいさつ

開会にあたってScience Tokyoの大竹尚登理事長があいさつしました。大竹理事長は、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して誕生したScience Tokyoが掲げる「善き未来」の実現に向け、異分野融合研究を全学的に推進していくと述べ、またScience Tokyoが国際卓越研究大学候補に選定されたことも紹介し、改革期にある大学としてエネルギー・医療分野の融合が重要な戦略領域であると強調しました。

開会のあいさつをする大竹理事長

InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム 活動概要・報告

はじめに、ISE代表の伊原学教授(物質理工学院 応用化学系)がISEの2025年度活動報告を行いました。国際ワークショップや共同研究、博士人材育成プログラムの推進に加え、インテリジェントシステムEne-Swallow®とチューニング生成AIとの融合プラットフォームに関する研究、マテリアルインフォマティックスに生成AIを活用する研究やカーボンニュートラル技術の共同研究など、研究と教育を一体的に進める活動について紹介しました。

ISEの活動について報告する伊原教授

趣旨説明

続いて、ISE副代表の木村好里教授(物質理工学院 材料系)が本シンポジウムの趣旨を説明しました。統合により拡大した大学の研究基盤を活かし、異分野研究者が協働することで社会課題の解決に資する価値創出を行う場として、本シンポジウムが位置付けられていると述べました。

シンポジウムの趣旨を説明する木村教授

基調講演「医工連携に不可欠な実質的グローバル体験を通した人材育成」

基調講演では、三島良直名誉教授(東京工業大学元学長、日本医療研究開発機構(AMED)前理事長)に「医工連携に不可欠な実質的グローバル体験を通した人材育成」と題して、医工連携を軸とした新産業創出の鍵についてお話しいただきました。三島名誉教授は、ご自身がマサチューセッツ工科大学やハーバード大学の研究現場から得た知見、スタートアップ・VC・大学・企業が連携する米国のエコシステムを紹介しました。また、国際共同研究を推進し、挑戦的研究を可能にする環境を整備することが、医療・エネルギー分野双方のイノベーションに不可欠であると強調しました。

三島名誉教授による基調講演

講演1「6つのVIと“GX Frontier”」

後藤美香教授(環境・社会理工学院)が、Science Tokyoが全学的に導入した「Visionary Initiatives(VI:ビジョナリーイニシアティブ)」と、その一領域である「GX Frontier」の取り組みを紹介しました。VIは「善き生活・善き社会・善き地球」を実現するための分野横断型の研究組織体制であり、学内外の境界を超えて社会課題の解決を目指すこと、GX Frontierでは、次世代エネルギー材料開発、国際研究連携、社会実装モデル構築など、カーボンニュートラル達成に向けた多面的な研究を推進していることについて説明しました。

VIのもとでの研究について講演する後藤教授

講演2「医工連携で心臓を診る」

笹野哲郎教授(大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野)が、「医工連携で心臓を診る」と題して講演しました。笹野教授は、心房細動の増加と心原性脳塞栓症の深刻さを踏まえ、医工連携による新しい診断技術の可能性について説明しました。また、AI解析による12誘導心電図の高度化、スマートデバイスの活用、磁気センサを用いた心磁図など、生体データの多様な取得技術が診療の高度化に寄与すること、病院と研究者が同一空間で協働する「国際医工共創研究院」の取り組みによる、臨床ニーズを起点とした技術開発の重要性を強調しました。

笹野教授は心臓疾患を例に医工連携の可能性を紹介

講演3「グリーンアンモニア合成に向けた革新的固体触媒の開発」

北野政明教授(総合研究院 元素戦略MDX研究センター)は、脱炭素社会におけるグリーンアンモニアの重要性と、その合成を支える革新的触媒研究について講演を行いました。従来のハーバー・ボッシュ法は高温・高圧を要し世界的なエネルギー消費負荷が大きいこと、新規エレクトライド触媒やハイドライド触媒、遷移金属を用いない新材料触媒など、基礎科学の進展が低温・低圧プロセスの実現を後押ししていることを紹介しました。加えて、スタートアップとの連携による実証プラント稼働など、産業化への動きも加速していることについて、実例を交えて説明しました。

脱炭素社会の実現をテーマに講演する北野教授

パネルディスカッション「エネルギー・医療 新産業創成に何が必要か?」

最後のパネルディスカッションでは、エネルギー、医療、経済、ビジネスなど多様な視点から、新産業創出に向けた課題が議論されました。エネルギー分野ではグリーンアンモニアやCO2変換技術、医療分野ではAI診断や生体データ活用など、いずれも社会実装可能なシーズが豊富にある一方で、研究と市場との「ギャップ」や分野間の「分断」が共通の障壁として存在することが指摘されました。異分野間の継続的な対話、シナリオ設計や市場分析といったアカデミアの新たな役割、そして若手研究者の挑戦を支えようという文化が、新産業創出の鍵であるとの認識が共有されました。

パネルディスカッションのモデレータを務めた伊原教授
左から、三島名誉教授、笹野教授、後藤教授、北野教授、濱崎博特定教授(エネルギー・情報卓越教育院)の各パネリスト

参加者から積極的な質問があり、パネルディスカッションの議論は白熱しました。

パネルディスカッションの参加者
パネルディスカッションの参加者
パネルディスカッションの参加者

ISEでは今後も、さまざまな機会を通じて、多元的エネルギー学理とエネルギービッグデータ科学の融合を軸とした産学連携研究、情報発信、人材育成などの事業を続けていきます。

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