東京科学大学(Science Tokyo)の大竹尚登理事長は、6月10日にマサチューセッツ工科大学(MIT)を訪問し、サリー・コーンブルース学長をはじめ、MITの幹部および教員と会談しました。
今回の訪問では、両大学の連携強化に向けた具体的な方策について協議が行われました。

2024年10月の設立以来、Science Tokyoは、教育・研究をはじめ社会実装の在り方を根本から見直し、改革を進めています。Science Tokyoでは、「Visionary Initiatives(VI:ビジョナリーイニシアティブ)」 という融合研究体制のもと、持続可能で国際的に開かれたエコシステムの構築をめざすとともに、国内外の志を同じくするパートナーと連携し、地球規模課題の解決に取り組んでいます。
こうした背景のもと、今回のMIT訪問が実現しました。
6月10日、米国マサチューセッツ州ケンブリッジにあるMITを訪問した大竹理事長は、Science Tokyoの新たなビジョンおよびVIをMIT側に紹介し、これらがMITで展開されている学長のスペシャル・イニシアティブと多くの共通点を有していることに触れました。具体的には、産学官コンソーシアムを通じた共同資金調達の可能性などで、両大学が緊密に協力できる分野を幅広く説明しました。これに対しコーンブルース学長は、MITにとってScience Tokyoとの国際連携には確かな意義があるとの見解を示し、教員間の交流を促進する多様な方策が存在することに言及しました。
また、Science Tokyoの訪問団に同行した在ボストン日本国総領事館の髙橋誠一郎総領事からの発言を受けて、コーンブルース学長は、日本が科学技術分野に対して明確なコミットメントを示していることを評価しました。
訪問当日は、MITの複数の関係者との間で実りある意見交換が行われました。大竹理事長のほか、井上光太郎理事(財務担当)、古川哲史執行役副理事(総合戦略担当)・執行役副学長(研究・産学官連携担当)、伊藤紀子理事特別補佐(総合戦略担当)は、MITのアナンタ・P・チャンドラカサン戦略・イノベーション担当責任者・工学部長(次期プロボスト)と面会し、MITにおける各種イニシアティブの資金調達のあり方や、将来的な共同イニシアティブをいかに支援していくかについて協議を行いました。大竹理事長からScience Tokyoの新たなビジョンに基づく教育・研究の進め方について説明があったのに対し、チャンドラカサン教授からは、MITにおける学びの環境に関する近年の変化が紹介されました。

Science Tokyoの訪問団はまた、エラザー・R・エデルマン教授との間で医工連携の可能性について意見交換を行ったほか、医学・工学研究所(IMES)所長のアレックス・シャレック教授およびバイオメディカル工学分野のウィテカー記念教授 であるマーサ・L・グレイ教授とも面会しました。



このほか、Science Tokyoの訪問団はMITのマーティン・トラスト・センター・フォー・アントレプレナーシップのマネージング・ディレクターであるビル・オーレット氏と面会し、アントレプレナーシップとスタートアップ支援について意見交換を行いました。また、次世代のタフテック分野の起業家に投資するMIT発のベンチャーキャピタルファンド「The Engine Ventures(ジ・エンジン・ベンチャーズ )」のCEO兼マネージング・パートナーであるケイティ・レイ氏とは、スタートアップの初期段階における支援のあり方等について議論を交わしました。


さらに、コーポレート・リレーションズ部門およびMITテクノロジー・ライセンシング・オフィスの代表者と面会しました。
その後、MITが創設したナノサイエンスおよびナノエンジニアリング分野に係る先端研究のための施設である「MIT.nano 」では、所長のウラジミール・ブロヴィッチ氏の案内のもと、施設見学を実施しました。



最新の動向をふまえ、これら一連の意見交換はScience TokyoとMITの研究者間における連携をさらに深化させる可能性を探ることを目的として行われました。Science Tokyoでは、MITのトマス・パラシオス教授とのマイクロエレクトロニクス分野における協力の可能性を検討しているほか、MITスローン経営大学院のマイケル・A・クスマノ教授とアントレプレナーシップ分野での連携を進めています。
MIT訪問を終えて、大竹理事長のコメント
「MITが現在取り組んでいる数々の先進的な試みに、私は深い敬意を抱いています。また、いくつかのアプローチにおいて、Science Tokyoとの共通点も感じられ、大変興味深く思いました。Science Tokyoは、今まさに大きな変革を主導できる特別な立場にあります。だからこそ、MITとの対話をさらに深め、ボストンと東京というイノベーション拠点をつなぐ形で、より強固な協力関係に向けた具体的な道筋を築き、ともに革新的な解決策を生み出していければと願っています。」
Science TokyoとMIT—通じ合う原点と価値観
東京科学大学(Science Tokyo)は、東京医科歯科大学と東京工業大学の統合により2024年に設立されましたが、その前身となる東京工業大学は、数十年にわたりMITとの連携を築いてきました。たとえば、東工大とMITは1990年に「IDCロボットコンテスト大学国際交流大会(International Design Contest)」を共同で立ち上げ、翌1991年には、東工大の工学部制御工学科とMIT機械工学科との間で国際学術交流協定が締結されています。
より近年では、2019年に、東工大の工学院、物質理工学院および環境・社会理工学院が、MITの原子力科学工学科と学術交流協定を締結し、授業料免除や単位互換を含む学生交流を開始しました。両大学の原子力エネルギー分野における連携は、2006年に東工大の原子炉工学研究所とMITの先進原子力エネルギーシステムセンター(CANES)が協定を締結したことに始まります。
Science TokyoとMITはいずれも、技術的な創意工夫、産業界との確かな結びつき、そして科学技術を人々の暮らしの向上に活かす姿勢を原点に持っています。両大学は、教育と研究において実践的なアプローチを採り、好奇心、探究、発見を尊ぶ個の力と起業家精神を育む拠点であると同時に、グローバルなインパクトの創出に向けては、共創的なアプローチこそが不可欠であるという認識を共有しています。
現在、Science Tokyoは、東京そして日本におけるイノベーション・エコシステムの中核を担っており、この動きを、より善き未来の実現を志すグローバルなパートナーとの連携へと発展させていくことを目指しています。
※記載の所属・役職名は、いずれも会談当時のものです。