歯ぎしりや強いかみ合わせはなぜ歯周病を悪化させるのか

2026年7月24日 公開

歯周病を悪化させる仕組みを骨の中から探る

どんな研究?

硬いものを強くかんだり、歯ぎしりをしたりすると、歯に過剰な力がかかることがあります。この力によって歯を支える組織が傷ついた状態を「咬合(こうごう)性外傷」といいます。こうした咬合性外傷は、歯周病を悪化させる要因であると昔から考えられてきました。

実は、「咬合性外傷はなぜ歯周病を悪化させるのか」は100年以上前から議論されてきたテーマです。1963年には、細菌による炎症と過剰なかむ力が組み合わさることで歯周組織の破壊が進むという「共同破壊説」が提唱されました。その後、サルやイヌを使った研究によって、過剰なかむ力だけでは歯周病は起こらないものの、歯周病があると骨の破壊を加速させることがわかりました。ところが、なぜ悪化するのかという分子レベルの仕組みは長年の謎のままでした。

Julien Tromeur/Shuttertstock.com

そこで東京科学大学(Science Tokyo)の土谷洋輔(つちや・ようすけ)助教らの研究チームは、歯周病を起こしたマウスにさらに咬合性外傷を加え、歯ぐき、骨、歯根膜(歯と骨をつないでいるクッションのような組織)で。それぞれ遺伝子がどのように働いているのかを調べました。解析には、RNAシークエンスという、一度に多くの遺伝子の働きを詳しく調べられる手法を用いました。これは、咬合性外傷が歯周組織に与える影響を遺伝子レベルで包括的に解析した初めての研究です。

ここが重要

研究の結果、咬合性外傷だけでは長期間続いても歯を支える骨はほとんど減りませんでした。一方で、歯周病がある状態では骨が大きく失われることがわかりました。つまり、強くかむことそのものが危険なのではなく、歯周病と重なったときこそが問題だったのです。

研究を進めるうえで難しかったのは、歯ぐき、骨、歯根膜のどこで変化が起きているのかを見極めることでした。そこで研究チームは3つの組織を別々に採取して遺伝子の働きを詳しく調べました。その結果、咬合性外傷の影響は歯ぐきや歯根膜よりも骨で特に強く現れることがわかりました。

さらに、歯周病のある骨に強い力が加わると、炎症を促したり骨を壊したりする働きが活発になることも明らかになりました。

今後の展望

今回の研究によって、歯周病と咬合性外傷が重なったときに、骨の中でどのような遺伝子の働きの変化が起きるのかが初めて明らかになりました。この成果は、将来、歯周病の悪化を早期に予測したり、新しい治療法や予防法を開発したりするための手がかりになると期待されます。

また、今回の成果は、歯周病の治療とかみ合わせの管理の両方が大切であることを科学的に裏付けました。歯周病の進行を防ぐためには、細菌のコントロールだけでなく、歯ぎしりや食いしばり、かみ合わせの異常にも目を向けることが重要だと考えられます。

研究者のひとこと

咬合の不調和が歯周炎を悪化させることは広く知られていましたが、今回の研究で遺伝子変化を網羅解析することで、機序についてわかってきました。噛み合わせも含めた包括治療の重要性が広く知られることを期待しています。また、この研究を発展させ、新たな歯周炎予防的アプローチの確立、咬合治療に対する科学的根拠を高めていけるように、継続して研究を行なっていく予定です。
(土谷洋輔:東京科学大学 医歯学総合研究科 歯周病学分野 助教)

土谷洋輔助教

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