電気の力で磁石の向きを変える!

2025年8月5日 公開

次世代メモリのカギを握る新発見-電場で「垂直方向の磁石」をひっくり返す道を開拓

どんな研究?

スマートフォンやパソコンに使われる「メモリ」は、情報を記録しておくために欠かせません。東京科学大学(Science Tokyo)の東正樹(あずま・まさき)教授と重松圭(しげまつ・けい)助教らは、メモリに使える新しいタイプの物質の開発に挑んでいます。それがマルチフェロイック物質です。

マルチフェロイック物質とは、コンデンサーと磁石の両方の性質を持つ特別な材料です。ほとんどの物質は、電気をためる「コンデンサーの性質」か、N極とS極がある「磁石の性質」の、どちらか片方だけを持っています。

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ところが、マルチフェロイック物質はどちらも持っているのです。さらに、電気によって磁石の向きを変えられたり、逆に磁力で電気の性質を変えられる物質は、マルチフェロイック物質の中でもとても珍しい存在です。

ここが重要

化学式ではBiFe₀.₉Co₀.₁O₃と記述されるこの物質は、東研究室ではじめて発見されたマルチフェロイック材料です。重松助教らは、この物質に電圧をかけると磁石の向きが反転する性質を詳しく研究してきました。これまで、磁石の向きが反転するためには、電圧のかかる方向と、磁石のN極からS極に向かう方向が同じでなければならないと考えられてきました。

ところが、今回、その使い方を工夫すれば、横方向から電圧をかけても磁石のS極とN極が入れ替わる変化が起きることを、世界で初めて確認しました。これは、これまでの研究者たちの常識をくつがえす、大きな発見です。

今後の展望

今回発見されたマルチフェロイック物質の特性を生かすことができれば、低消費電力かつ小型化も可能な次世代メモリの開発に大きく貢献できる可能性を秘めています。

さらに、スマートフォンやコンピューターなどの電子機器の省エネ化に向けても、大きな一歩となりました。

研究者のひとこと

この成果は、東研究室で研究に携わってきた歴々の大学院生たちの粘り強い取り組みが結実したものです。特に、この論文の筆頭著者である伊藤拓真(いとう・たくま)さんは、磁石の性質を確かめるために必要な最先端の実験装置を使うため、アメリカの共同研究者のもとを訪れ、現地での作業に取り組んでくれました。

これからもマルチフェロイック物質BiFe₀.₉Co₀.₁O₃の特性をさらに引き出して、次世代メモリの実現に向けて取り組んでいきます。(重松圭:東京科学大学 総合研究院 フロンティア材料研究所 助教)

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