腎臓で水と塩分を体内に保つ仕組みを解明

2026年9月18日 公開

LRBA欠損症の脱水リスクに、腎臓の水・塩分調節が関与

どんな研究?

体から水分が失われると、腎臓は尿を濃くして、水分をできるだけ体内に残そうとします。ところが、慢性的な下痢で水分を失っているのに、なぜか尿を十分に濃くできない人たちがいます。

その人たちが患っているのは、LRBA(エル・アール・ビー・エー)欠損症です。この病気は、免疫機能の異常を特徴とするまれな遺伝性疾患です。

LRBAはもともと、免疫反応が過剰にならないように調節するタンパク質として知られていました。こうした免疫での働きに加えて、東京科学大学(Science Tokyo)の安藤史顕(あんどう・ふみあき)助教らの研究チームは、これまでの研究から、このタンパク質には腎臓でも重要な役割があることを見出していました。それは、LRBAが腎臓の細胞で水を通すタンパク質を調節し、尿を濃くする仕組みに関わるという役割です。実際、LRBAが働かないマウスでは、尿を十分に濃くできず、尿量が増えていました。

crystal light/Shutterstock.com

そこで今回は、ヒトのLRBA欠損症でも同じような問題が起きているのかを確かめるとともに、LRBAが腎臓で水や塩分の回収をどのように支えているのかを、患者さんのデータ、遺伝子改変マウス、培養細胞を使って詳しく調べました。

ここが重要

まず患者さんのデータを調べると、一部に尿量が多いケースがありました。また、尿の濃さを調べた患者さんでは、慢性的な下痢で水分を失っているにもかかわらず、尿を十分に濃くできていないことが分かりました。マウスで見つかっていた腎臓の異常が、ヒトでも起きていることが示されたのです。つまり、下痢で水分を失っているうえに、腎臓でも水を十分に体内へ戻せていなかった可能性が示されました。

では、腎臓では何が起きているのでしょうか。腎臓は、尿がつくられる途中で水を体内に戻すことで尿を濃くし、水分が失われるのを防ぎます。この水の回収に関わるタンパク質の1つがAQP4です。研究チームは今回、LRBAがAQP4を調節し、水を回収する仕組みを支えていることを初めて明らかにしました。

さらに、LRBAは水だけでなく塩分の回収にも関わっていました。体内の塩分が不足したときには、SPAKというタンパク質がナトリウムの回収を助けます。LRBAはSPAKが分解されるのを防ぎ、働く場所へ移動できるよう支えていました。

つまりLRBAが働かないと、腎臓で水も塩分も十分に回収しにくくなります。LRBAは、腎臓の中で水と塩分を回収する複数の仕組みを、それぞれ異なる方法で支える調整役だったのです。

今後の展望

今回の成果は、LRBA欠損症で脱水が起こる背景を、慢性的な下痢などによる水分の喪失だけでなく、腎臓で水や塩分を十分に回収できないという面からも考える必要があることを示しています。特に体調を崩したときには、水分や塩分の状態をより注意深く管理することが重要になります。

また、特定の遺伝子変異を再現したマウスでは、腎臓に水を体内へ戻すよう促す薬を投与すると、尿を濃縮する力が改善しました。今後、ヒトでも効果が期待できるケースを見極められれば、遺伝子変異や腎臓の状態に応じた治療につながる可能性があります。

研究者のひとこと

LRBAは、これまで主に免疫の働きに関わる分子として知られてきました。しかし、LRBAは非常に大きな分子で、さまざまなタンパク質と結びつくことができるため、免疫だけでなく、体の中でさまざまな役割を担っている可能性があります。

これまで、LRBAの働きが障害されるLRBA欠損症において、なぜさまざまな症状が現れるのか、その根本的な原因は十分に分かっていませんでした。LRBAが体の中で果たす複雑な役割を一つずつ明らかにすることが、LRBA欠損症の病態を理解するための重要な手がかりになると考えています。

これからもLRBAの全貌に迫る研究を進め、LRBA欠損症患者さんの病態をより深く理解し、将来の診療や治療につながる研究に取り組んでまいります。

(安藤史顕:東京科学大学 医歯学総合研究科 腎臓内科学分野 助教)

安藤史顕助教

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