東京科学大学病院が千葉大学病院への医療器材の洗浄・滅菌支援を実施

2026年9月10日 公開

東京科学大学病院は、8月の千葉豪雨で排水処理設備が被災した千葉大学医学部附属病院(以下、千葉大学病院)に対し、手術支援ロボットの器材を含む医療器材の洗浄・点検・組み立て・滅菌を行う支援を実施しました。大学病院の高度な機能を相互に補い、被災地の医療を止めないための新たな連携です。

支援要請から2日で受け入れを開始

8月13日の記録的な豪雨により、千葉大学病院では地下の排水処理設備が冠水して故障し、手術や検査に使用する医療器材の洗浄・滅菌が困難となりました。8月19日には予定していた手術をすべて中止し、その後も手術件数を制限せざるを得ない状況となりました。

これを受け、千葉大学病院の大鳥精司病院長から、東京科学大学(Science Tokyo)の藤井靖久医療担当理事と東京科学大学病院の宮﨑泰成病院長に支援の相談が寄せられました。同じ頃、国立大学病院長会議からも、本院の久保田英雄材料部長へ材料部門による相互支援の打診がありました。久保田部長は以前から、災害時に大学病院の材料部門が支え合う体制の必要性を訴え、情報共有の仕組みづくりに取り組んできました。

委託事業者とともに東京科学大学病院を訪問した千葉大学病院視察材料部スタッフに向け材料部での医療器材の洗浄・滅菌について説明を行う久保田材料部長(右)
対象となる器材の種類や量、搬送、識別、処理工程、安全管理などを確認する宮﨑病院長(左)と、千葉大学病院の穂積崇史材料部副部長

正式な要請を受けた19日のうちに関係者が協議し、翌20日には千葉大学病院の穂積崇史材料部副部長が本院を訪問しました。宮﨑病院長、久保田部長らと、対象となる器材の種類や量、搬送、識別、処理工程、安全管理などを確認し、現場を視察。翌21日夕方には千葉大学病院の大鳥病院長も本院を訪れ、医療器材の洗浄・滅菌支援を通じた両院の連携を直接確認し、最初の器材が搬入され、迅速に洗浄・滅菌支援を開始しました。

材料部で視察する宮﨑病院長(左)と、千葉大学病院の大鳥病院長(右)
複数のメディアの取材に応じる久保田英雄材料部長

夜間の設備と専門性を生かし、約40件の手術を支援

今回の支援では、千葉大学病院から夕方に搬出された器材を本院が受け入れ、主に夜間から早朝にかけて洗浄、点検、組み立て、滅菌を行い、翌朝に返却するサイクルを構築しました。1日最大200セット、手術約40件分に相当する器材の受け入れを想定し、本院の診療に影響を及ぼさないよう運用しました。

対象には、手術支援ロボット「ダビンチ」などの複雑な構造を持つ器材も含まれています。これらの器材には、機種ごとに定められた専門的な手順、設備、知識に加え、使用履歴と処理工程を管理するトレーサビリティーが欠かせません。本院では、複数の手術支援ロボットを日常的に運用してきた実績を生かし、専門スタッフ、委託事業者、運送会社、機器メーカーが一つのチームとなって、安全で継続可能な体制を整えました。

また、両院の器材が混在することを防ぐため、識別方法、保管場所、作業時間帯を明確に分け、受け渡しから返却までの各工程を厳密に記録しました。

本格的な受け入れとなった8月24日夜には、千葉大学病院から使用済みの医療器材約60セットが、2tトラックで本院に運び込まれました。翌25日の診療や手術に間に合わせるため、材料部では、千葉大学病院のスタッフが夜間・深夜帯に洗浄・点検・組み立て・滅菌を行い、翌朝の返却に備えました。こうした取り組みにより、千葉大学病院では24日から一般的な手術の一部を再開することができました。

使用済み医療器材搬入の様子
千葉大学病院のスタッフによる洗浄の様子

平時の備えが支えた「機能別の相互支援」

今回の支援を可能にした基盤の一つが、2023年9月に完成した「C棟(機能強化棟)」です。免震構造と非常用発電設備などの防災機能を備え、ERセンター、手術室、材料部を集約しています。医科・歯科の洗浄・滅菌設備、専門的な知識を持つスタッフ、夜間にも設備を運用できる余力、器材を追跡管理する仕組みなど、ハードとソフトの両面における平時からの備えが、迅速な受け入れにつながりました。

医師や看護師、手術室が機能していても、安全に使える器材がなければ手術はできません。洗浄・滅菌部門は、患者さんからは見えにくい場所で日々の診療を支える、病院の重要なインフラです。今回の取り組みは、災害によって停止した病院機能を別の大学病院が補う「機能別の相互支援」であり、地域の医療を止めないための新たな災害医療のモデルになり得ます。

メディア報道について

本支援の取り組みは、多くのメディアでも取り上げられました。

8月21日にはNHKニュース「被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し 東京科学大」で紹介されました。8月24日放送の日本テレビ「news zero」では、櫻井翔さんが本院の支援現場を訪れたScience Tokyoの田中雄二郎学長にインタビュー取材しました。番組内で田中学長は、国立大学病院同士で医療器材の洗浄・滅菌を支援する取り組みはおそらく初めてであり、医療材料を通じた新しい病院連携の一歩だとの認識を示しました。また、全国規模の災害に備え、平時から病院同士が助け合う仕組みを考える必要性についても強調しました。

全国の大学病院が支え合う仕組みへ

東京科学大学病院は、今回の支援で得られた経験と課題を記録し、全国の大学病院で共有していきます。各病院が保有する設備、受け入れ可能な器材や処理量、連絡窓口、搬送方法などを平時から共有し、洗浄・滅菌、物流、設備、電源、情報システムを含めて支え合う体制を整えることが重要です。

東京科学大学病院はこれからも、本院の患者さんとスタッフの安全を守りながら、大学病院としての専門性と総合力を生かし、災害時にも必要な医療を継続できる仕組みづくりに貢献していきます。

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