FRONTEOと東京科学大学、AI創薬の産学連携研究拠点を開設

2026年5月19日 公開

AI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」とアカデミアの技術力・研究力を融合、ドライ・ウェット研究の密接な連携で日本の創薬力強化に貢献

東京科学大学(Science Tokyo)と株式会社FRONTEOは、2026年4月1日、東京科学大学横浜キャンパス内に「FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点」(以下「本拠点」)を開設し、4月27日、調印式を開催しました。

本拠点は、東京科学大学が有するPLOM-CON解析法[用語1]リシール細胞技術[用語2]などの先端技術とFRONTEOの方程式駆動型AI「KIBIT」[用語3]を同一拠点で融合させ、仮説生成から実験検証まで一気通貫で実行可能になります。AI創薬分野における最先端技術の社会実装を推進し、日本発の創薬イノベーション創出を目指します。

(左)FRONTEO 代表取締役社長 守本 正宏、(右)東京科学大学 理事長 大竹 尚登

これまでの連携と本拠点開設の経緯

東京科学大学とFRONTEOは、2022年より疾病構造解析および創薬ターゲット探索に関する共同研究を進めるなど、連携を深めてきました[参考文献1、2]。これまでの成果を踏まえ、基礎研究から社会実装までの連携を本格化させるため、本拠点の開設に至りました。

本拠点が実現する創薬の「仮説検証ループ」

現在の創薬エコシステムを競争力のあるものにするためには、AIによる標的分子[用語4]探索や仮説生成(ドライ研究)と、細胞や生体を用いた実験検証(ウェット研究)を有機的に結びつける必要があります。

本拠点では、FRONTEOがAI「KIBIT」を用いた創薬標的分子候補の抽出および作用メカニズムの仮説構築(ドライ研究)を行い、東京科学大学が実験検証(ウェット研究)を迅速に実施します。さらに、実験結果を再びAI解析に還元することで、仮説生成と検証を循環させる「仮説検証ループ」を高水準で実現し、創薬成功確率の飛躍的な向上を目指します。

本拠点による新たな価値創出

FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点の概要図

本拠点により、大学においては研究成果の社会実装へとつなげる仕組みの構築、製薬産業においては高度な作用機序理解や生体理解に基づく良質な創薬シーズの獲得、社会に対しては革新的な治療法・医薬品の創出という価値をもたらすことが期待されます。

FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点が創薬力の高度化につながる説明図

共同研究は、がん領域をはじめとするアンメット・メディカル・ニーズ[用語5]の高い疾患領域を対象とします。研究において見出された有望な創薬シーズについては、導出[用語6]も視野に入れた展開を検討します。また、研究において得られた発明等については、FRONTEOが東京科学大学と協議の上で、知的財産権の一部または全部の取得を検討します。

図. 本拠点を支える革新的技術

東京科学大学の技術:「PLOM-CON解析法」と「リシール細胞技術」

東京科学大学は、2026年1月に文部科学省より国際卓越研究大学[参考文献3]に認定されるなど、日本を代表する研究機関の一つです。同学 総合研究院 細胞制御工学研究センターの村田昌之特任教授らの研究グループは、細胞科学における革新的な先端技術を有しています。

  • 「PLOM-CON解析法」は、単一細胞内のタンパク質の量的変化および質的・時空間的(局在)変化に基づき、細胞状態を解明する技術です。従来の静的解析が「点を見る」アプローチであるのに対し、PLOM-CONは「システム全体の揺らぎを見る」動的ネットワーク解析により、病気の初期(前兆)段階での細胞状態変化を検出し、新規標的の発見や作用機序の解明を可能にします。
  • 「リシール細胞技術」は、細胞膜を一時的に開放し、内部のタンパク質や因子を物理的に置換した後、再び膜を修復して新たな機能を持つ細胞を構築する技術です。十数年かかる疾患の発症過程を実験室でその日に解析することが可能となります。

FRONTEOの技術:「非連続的発見」を可能にする方程式駆動型AI「KIBIT」

FRONTEOが提供するAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(以下「DDAIF」)[参考文献4]」は、「KIBIT」を中核エンジンとして、創薬研究者およびAIエンジニアの知見を融合したサービスです。

一般的な自然言語処理AIやナレッジグラフは、「AはBに関係」「BはCに関係」といった連続的なつながりから推論を行います。しかし、この「連続的発見」のアプローチでは、研究者が求める新しい発見を導くことは困難です。「KIBIT」は独自の方程式により、論文に直接記載されていない疾患と遺伝子の「非連続的」な関連性を予測することが可能であり、この技術は日本・米国・欧州で特許を取得しています。

「DDAIF」のこれまでの実績として、すい臓がん研究において約20,000のヒトの全遺伝子の中から、標的分子候補17遺伝子を抽出し、in vitro試験により6遺伝子ですい臓がん細胞の増殖抑制を確認しています。また、従来約2年を要していた「標的探索」のプロセスを2日に短縮しました。

FRONTEO Drug Discovery AI Factory(DDAIF)について

創薬の仮説生成をあらわす図

「FRONTEO Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」 は、自然言語処理に特化した方程式駆動型AI「KIBIT(キビット)」(日本・欧州・米国・韓国特許取得済)と、FRONTEOの創薬研究者およびAIエンジニアの知見を融合したAI創薬支援サービスです。疾患関連遺伝子ネットワークの解析や、標的分子候補に関する仮説の構築を通じ、医薬品開発における研究者の意思決定を強力にサポートします。本サービスはすでに複数の大手製薬企業で導入され実績を重ねています[参考文献5]

  • Drug Discovery AI Factoryに使われている技術は、FRONTEOが日本および韓国、米国、欧州で計21件の特許権を取得しています。

コメント

東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター 特任教授/FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点 拠点長 村田 昌之

FRONTEOの方程式駆動型AI「KIBIT」と出会い、私たちの細胞科学技術との融合に大きな可能性を感じてきました。本拠点で、ドライとウェット双方の卓越した研究者が日常的に議論し、発見を共有・検証し、次の仮説生成へとつなげていく。このループを回すことで、従来の創薬研究における不確実性との戦いを制し、創薬の成功確率を飛躍的に向上させる、次世代創薬のプロトタイプになると確信しています。

株式会社FRONTEO 取締役/CSO(Chief Science Officer)/FRONTEO AI創薬エコシステム協働研究拠点 副拠点長 豊柴 博義

創薬研究におけるAIの活用が進む中、創薬の成功確率向上にはAIによる予測結果を細胞・動物実験で検証し、その結果を再びAI解析に反映するサイクルの高度化が不可欠です。東京科学大学の優れた研究者と協働し、両者の技術融合や新たな技術の創出・開発によりアンメット・メディカル・ニーズに応える創薬の加速に取り組めることを大変嬉しく思います。FRONTEOの自社創薬研究を推進するとともに、日本の創薬力強化に貢献し、「日本を再び創薬の地に」の理念の実現に努めてまいります。

参考文献

用語説明

[用語1]
PLOM-CON解析法:単一細胞内のタンパク質の量的変化と、それらの質的・時空間的(局在)変化に基づき、細胞のシグナル伝達や疾患・薬効が示す細胞状態を解明する解析手法[参考文献6]
[用語2]
リシール細胞技術:細胞内のタンパク質や因子を入れ替え、新たな機能を持つ細胞を構築する技術。病態モデルを迅速に再現し、薬剤効果を検証する実験などで活用される。
[用語3]
方程式駆動型AI「KIBIT」:FRONTEOが独自開発した人工知能。方程式を用いることで非連続な発見、因果関係の把握、高い分析精度と再現性を実現。学習プロセスの軽量化によりパソコン1台で稼働。日米欧で特許取得済み。
[用語4]
標的分子:薬を作用させる対象とする人間の中にある分子(遺伝子)のこと。
[用語5]
アンメット・メディカル・ニーズ:有効な治療方法が見つかっていない疾患における、新しい治療薬や治療法などへのニーズ。
[用語6]
導出:製薬企業においては、自社内で研究開発を行う形態のほか、他社・他機関から医薬品候補化合物などの開発権や販売権を獲得するケースがあり、後者の場合に、開発した企業・機関が製薬企業に対してそれらの開発権・販売権などの許諾・譲渡を行うことを導出(ライセンスアウト)と呼ぶ。

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