AIが心電図から見抜く「糖尿病の一歩手前」

2026年4月21日 公開

わずかな心電図の変化から糖尿病予備群を見つけるAIを開発

どんな研究?

健康診断で「血糖値が少し高めですね」と言われても、自覚症状がないまま過ごしてしまう人は少なくありません。こうした状態は「糖尿病予備群」などと呼ばれ、気づかないうちに糖尿病へと進んでしまうことがあります。

これまでの研究では、心臓の電気信号を測る心電図をAIで解析することで、体のさまざまな状態を推定できる可能性が示されてきました。心臓病だけでなく、年齢や性別、高血圧などの特徴まで読み取れることがわかり、さらに、詳しい心電図のデータと患者情報を組み合わせれば、糖尿病の可能性を予測できるかもしれないという報告もありました。

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しかし、糖尿病よりも早い段階にある糖尿病予備群の場合、心電図の変化は非常にわずかであると考えられ、心電図データだけで見つけられた研究はこれまでありませんでした。また、AIを利用した場合でも、どの情報をもとに判断しているのかが分かりにくいという課題があり、医療の現場で安心して使うためには、まだ乗り越えるべき点がありました。

そこで東京科学大学(Science Tokyo)の小宮力(こみや・ちから)講師を中心とする研究チームは、AIが心電図のごく小さな変化を読み取り、糖尿病予備群の可能性を見つけることができるAIモデル「DiaCardia(ダイア・カーディア)」を開発しました。

ここが重要

この研究では、心電図のデータだけから糖尿病予備群を高い精度で特定できることを世界で初めて示しました。ポイントは、人には読み取りにくい心電図のわずかな変化をAIが捉えたことです。

AIは膨大なデータの中から人間には見分けにくい微細なパターンや関係性を見つけ出すことに優れています。本研究で開発されたDiaCardiaは、心電図から抽出された269個の測定項目を解析します。その結果、人間には読み取りきれない心電図上のわずかな変化を捉え、糖尿病予備群を高精度に特定できることを実証しました。

また、今回の研究では、腕時計型の機器などで日常的に測れる心電図相当のデータだけでも、かなり高い精度でリスクを見つけられることも分かりました。

さらに、この研究は、単にAIが予測に成功したことを示しただけではありません。心電図のどの部分の情報が糖尿病予備群の兆候を示しているのかをも明らかにしました。たとえば、心臓の特定の電気信号の強さや心拍のリズムのわずかな変化が、糖尿病予備群を発見する重要な手がかりになっていることが分かったのです。

今後の展望

この技術が実用化されれば、採血や通院をしなくても、心電図のデータだけで糖尿病のリスクを早い段階で知ることができるようになります。病院で胸や手足に多くの電極をつけて測る詳しい心電図でなくとも、腕時計型機器で日常的に測った心電図からリスクを検出し、生活習慣の改善につなげることができれば、糖尿病の予防に大きく貢献する可能性があります。

また、AIがどの特徴を見て判断しているのかが説明できるため、医師も安心して使える診断支援ツールとして医療現場で活用されることが期待されています。

研究者のひとこと

健康寿命を延ばすため、これからは病気の予防が鍵を握ります。AIは、身体のわずかな変化から病気の兆候を検出することに優れた力を発揮することが今回わかりました。将来は、誰もが日常生活の中でいち早く自分の健康状態を知り、病気を防げる社会を実現したいと考えています。
(小宮力:東京科学大学 医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野(糖尿病・内分泌・代謝内科)講師)

小宮力講師(最前列右から3人目)と医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野のメンバー

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