東京科学大学(Science Tokyo)医学部 医学科3年の藤倉祐里さん、ヘイムス・エレイナ・ユウカさん、環境・社会理工学院 融合理工学系 博士後期課程1年の小島渚乃さんの3人からなるチームMediKetoが、3月17日に英国で開催された大学生を対象とする国際イノベーションピッチコンテスト「Bright SCIdea Challenge 2026」において、第3位に入賞しました。
本コンテストは、1881年に設立されたSociety of Chemical Industry(SCI)主催の社会課題の解決につながる科学的アイデアの事業化を競う国際大会で、世界各国の学生チームが参加しています。今年は32の学生チームがエントリーし、主催団体から用意されたトレーニングを受けた上で、独自のアイデアを市場に投入するためのビジネスプランを提出。審査の結果、最終選考に残った6チームが英国での決勝大会に臨みました。
本チームの連携は、本学のSlack上での声かけをきっかけにスタートしました。専門の異なるメンバーが集まり、それぞれの知見を持ち寄ることで、本プロジェクトが立ち上がりました。
開発テーマ:難治性てんかんの食事療法アプリ
3人が開発しているのは、難治性てんかんの患者を支えるケトン食療法サポートアプリです。
具体的には、患者やそのご家族が、日々の食事内容を簡単に記録・管理できる機能に加え、ケトン比の自動計算や必要な栄養バランスの提示、献立提案などを行うことで、専門的で継続が難しいケトン食療法を日常生活の中で実践しやすくする機能を備えています。ケトン食療法とは、糖質の摂取を制限し脂質を多く摂取することで、体内で「ケトン体」を生成し、脳のエネルギー源とする食事療法です。難治性てんかんに対する発作抑制効果が示されていることから、保険適用にもなっています。
医学的知見と工学的アプローチを融合させ、治療継続を支援するデジタルツールとして実用化を目指しています。まさに「医工連携」を体現する取り組みです。
英国決勝での挑戦
ロンドンで行われた決勝大会では、世界各国から選抜されたチームが登壇し、それぞれの研究と事業化構想を発表しました。
その中でScience TokyoのチームMediKetoは、臨床現場の課題に根ざした着実な提案と、医学と工学を融合した実装可能性の高さが評価され、第3位入賞という成果を収めました。
3位入賞チームメンバーのコメント
藤倉さんより
今回、学生という比較的チャレンジが許される環境で、Bright SCIdea Challengeという国際的なビジネスコンテストに参加できる機会にあずかれたこと、またこうして広報の機会をいただけたことを有難く思います。また、本プロジェクトを進めるにあたり、チームメンバーや日頃よりご指導・ご支援くださっている方々の存在が大きな支えとなっており、この場を借りて御礼申し上げます。
今回提出したビジネス案、ケトン食サポートアプリは、これまでの研究やヒアリングを通じて、てんかん患者さんがケトン食療法を継続する難しさを実感し、こうした医療現場の課題解決に貢献したいという思いから開発に着手しました。今回のBright SCIdea Challengeへの参加を通じて、さまざまなビジネスモデルや各国の規制、UIの多様性に触れ、多角的な視点を得ることができました。
今後は、チームで力を合わせて開発を進めながら、まず国内での社会実装を目指し、医学的知見を踏まえつつ日常の使いやすさを重視した設計を進めることで、将来的には世界中の患者さんの生活を支えるツールへと発展させていきたいと考えています。
ヘイムスさんより
このたび、Bright SCIdea Challengeにおいて入賞できたことを大変光栄に思います。てんかん患者さんが日々直面する課題に注目を集め、生活を改善できるアイデアを国際的な舞台に持ち込めたこと、Science Tokyoのチームとして大きな手応えを感じた瞬間でした。
トップバッターとしてのピッチは容易ではありませんでしたが、それ以上に、同じ志を持つ学生イノベーターたちとのつながり、VCや業界専門家の方々からの刺激など、多くを得られました。また、互いのスキルを補い合えるチームメンバーに恵まれたことも、今回の成果に欠かせない要因でした。
一学生としてのアントレプレナーシップは決して平坦な道ではありませんが、MedTechに挑む学生が一歩を踏みだすきっかけになれば幸いです。
小島さんより
優勝は逃したものの、審査員投票、オーディエンス投票でそれぞれ第3位、第2位という結果を残すことができたのは、我々のプロジェクトが、広い層に理解される強いナラティブを持っており、かつそれを本番で遺憾なく発揮することができたからであると自負しています。
本プロジェクトでは、このプロダクトに関わる医療従事者の方、患者さん、そのご家族の方々、研究者の方々といった、異なる領域の人々をつなぐコミュニケーション媒体としてのアプリの開発という点において、所属する環境・社会理工学院の朱心茹研究室、そして野原佳代子研究室での学びを大いに活用することができていると感じています。
今後も、臨床と研究の接続、関連分野における高い専門性、これら非常に堅牢な基盤をもとに行う、アクセシブルかつ直感的なデザインと操作性を兼ね備えたソフトウェア開発という我々の強みを、難治性てんかん患者の方々(またそのご家族の方々)の日常に寄り添う形で結実させていくことができれば幸いです。
そして最後に、てんかん当事者として、このようなプロジェクトが存在していること、それに自分がエンジニアとして参画していること、そして今回のコンペティションで結果を残すことができたこと、これら全てを大変嬉しく思います。この場を借りて、改めてチームに、そしてご支援くださっている関係者の方々に感謝したいです。ありがとうございます。
医工連携の海外展開へ
Science Tokyoでは、医歯学と理工学をはじめとする多様な分野の知を融合し、社会課題の解決に貢献する取り組みを推進しています。
今回の入賞は、医工連携の可能性を世界に示すとともに、若い研究者たちが国際舞台で活躍する象徴的な成果となりました。
今後のさらなる展開が期待されます。