室伏広治スポーツ庁長官が東京科学大学副学長(スポーツサイエンス担当)およびグローバルスポーツサイエンスセンター(仮称)準備室長に2025年10月1日就任

東京医科歯科大学と東京工業大学の統合により誕生した、東京科学大学(Science Tokyo)は、2026年4月に国際医工共創研究院内に『グローバルスポーツサイエンスセンター(仮称)』を設置することを決定し、その第一歩として2025年10月1日にグローバルスポーツサイエンスセンター準備室を開設します。同センターの準備室長、および副学長(スポーツサイエンス担当)には、室伏広治氏の就任を予定しています。室伏広治氏は、スポーツ庁長官として国のスポーツ政策を牽引してきましたが、9月末に長官任期を終え、本学副学長として新たな挑戦に臨みます。
グローバルスポーツサイエンスセンター(仮称)は、理工学系と医歯学系を融合した本学が持つ高度な医学・工学・情報科学・スポーツ医科学・人文社会学を基盤に「スポーツ×サイエンス×社会との共創基盤」を形成し、その成果を社会課題の解決に繋げることを目的とします。さらに、日本の文化的背景から生まれた 「一器多様※」 の理念、ひとつの器官や技術が、環境や視点の変化によって多様な可能性を発揮するという考え方を重視し、地球生命の多様な仕組みや人間能力拡張の可能性を視野に入れます。睡眠・意識研究や臓器・代謝研究、そしてアンチ・ドーピング研究といった先端領域も融合させることで、従来のスポーツ科学の枠を超えた新しい学際研究を推進し、世界をリードするスポーツサイエンス拠点の実現を目指します。
-
一器多様
日本の文化に根ざした考え方で、ひとつの器官や道具、空間が環境や使い方の変化によって多様な機能を持つとする発想。例として、和室がリビング・食卓・寝室と多機能に使われることや、箸や茶道具が使い手の工夫で新しい役割を持つことに通じます。
グローバルスポーツサイエンスセンター準備室
東京科学大学病院スポーツサイエンスセンターはこれまで、アスリートの競技復帰支援やパフォーマンス向上、外傷・障害の予防、さらには自己管理能力の向上を通じて、選手寿命の延伸に貢献してきました。医歯学的知見とスポーツ科学を融合し、個々の競技者に寄り添う実践的支援を行うことで、極めて重要な役割を果たしてきたと言えます。
この既存センターの機能をさらに発展・拡張させる構想として、「グローバルスポーツサイエンスセンター」の設立準備が進められており、その第一歩として、2025年10月1日、グローバルスポーツサイエンスセンター準備室を設置いたします。この準備室は、これまでの「選手を支えるスポーツ医療・科学の現場」から一歩進み、「スポーツを通じて社会と世界の“善き未来”を創造するスポーツ科学拠点」への進化を目指すための準備組織です。2026年4月の正式なセンター設立に向けて、本学ならではの医歯学・理工学を代表とする学際的知見と国際的な視点を結集し、体制整備と活動計画の具体化に取り組んでまいります。
室伏広治氏の新たな挑戦へのエール
武部 貴則(たけべ たかのり)
東京科学大学 総合研究院 ヒト生物学研究ユニット 教授/大阪大学 栄誉教授
領域のズレを創造へ ―室伏教授とともに開く未来の可能性
室伏教授がスポーツ庁長官としての任期を終え、本学に復帰されることで、従来のスポーツ科学の枠をはるかに超えた新しい学際的探究が拓かれると確信しています。先生の思想は『一器多様』の概念に象徴されるように、一つの器に多様な可能性を見出し、固定概念に全くとらわれない独創性に満ちています。本学が世界をリードする医歯理工の知と融合することで、領域の“ズレ”さえも創造の源泉とするクリエイティビティのCollisionが生まれ、全く新たなサイエンス領域を切り拓くでしょう。新たなステージで、未来社会における人類の可能性を広げる挑戦に、ご一緒できることを心より楽しみにしております。

関根 康人(せきね やすひと)
東京科学大学 未来社会創成研究院 地球生命研究所 所長・教授
スポーツと宇宙の掛け算 ―室伏教授が切り拓く人類の未来
室伏教授は、皆さんご存じのように数多の伝説を残す超トップアスリートであり、同時に、実は世界トップレベルの学術論文を、年に何本も執筆されるトップ・サイエンティストでもあります。その研究の好奇心の射程は、スポーツに留まらず、私の研究する宇宙探査にまで及び、スポーツと宇宙の掛け算ともいうべき共同プロジェクトも始めようとしています。競技時代を含めて全てに共通していると感じるのは、“人間とは何か、人間の限界はどこか”という根源的な問いであり、同時に“その限界をどう超えるか”という進化への欲求ではないかと思っています。超人類・室伏教授の新たな進化を、隣で見ることができるのはこの上ない喜びです。

室伏 広治(むろふし こうじ)
東京科学大学 教授・副学長(スポーツサイエンス担当)・グローバルスポーツサイエンスセンター(仮称)準備室長(いずれも2025年10月1日就任予定)
2004年アテネ五輪男子ハンマー投げで金メダル、2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得し、日本選手権20連覇を達成。2007年には現役中に博士号を取得。2014年より東京医科歯科大学病院教授・スポーツサイエンスセンター長を務め、東京2020大会スポーツディレクターを歴任。2020年からはスポーツ庁長官として国のスポーツ政策を担った。
