広域基礎研究塾 2026年度ワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」

2026年7月30日 公開

7月2日、大岡山キャンパスにて、若手研究者の育成プログラム広域基礎研究塾のワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」を開催しました。本ワークショップは、塾生個々の研究を俯瞰的に見つめ直す機会を提供し、自身の研究内容と未来社会との繋がりについて新たな気づきを促すとともに、異分野の研究者との共創環境のもとで「未来のシナリオ」実現のためにどのような科学・技術、社会の仕組みが求められるかを検討・抽出することで、俯瞰力、創造力、他者と協働する力を養うことを目的としています。

今年度は「AI時代に必要な『ビジョンの創発・推進・循環のためのデザイン』」をテーマに、基礎研究機構とグローバルビジョンコーディネーションセンター(GVCC)の共催により、第一回「未来共創Dialogue」として実施しました。

「未来共創Dialogue」とは、東京科学大学(Science Tokyo)が提唱するVisionary Initiatives(VI)の思想・構想を学内外で共有し体験するための対話のフレームです。

穐田(あきた)宗隆 塾長による趣旨説明の後、新田元 GVCC副センター長より、Science Tokyoの「VI構想」やビジョン駆動型研究についての紹介がありました。新田副センター長からは、「ありたい未来に近づくための未来像(社会デザイン)のプロセスを本日のワークショップを通じて体感し、VIの一員として、自身のビジョンやものの見方を広げるヒントを得てほしい」との激励が送られました。

穐田塾長
新田副センター長

続いて、根本かおり 特任准教授より、ビジョンの「創発・推進・循環」を促すためのデザイン手法についてのレクチャーが行われました。具体的な取り組み事例として、IHI×Science Tokyo×博報堂の未来洞察プロジェクトによる未来像共創活動「AI-Powered Resilient Society 2050」が紹介された後、参加した塾生12名は3チームに分かれてワークに取り組みました。

根本特任准教授

ワーク1:未来像の理解・共有

まず、「AI-Powered Resilient Society 2050」で提示された6つの未来像についての理解を深め、各チームが特に関心のある未来像を2つ選択しました。それらに対する新たな発見や感想、具体的なアイデアについて、各テーブルで議論を交わしました。

ワーク2:未来像からのバックキャスティング(逆算)体験

選択した未来像をもとに、未来から現在へと逆算する「バックキャスティング」を体験しました。各自が書き出した個人のアイデアをベースに、ファシリテーターによる適切な助言を受けながらチーム内でさらに議論を深めました。時には雑談も交えながら、終始リラックスした雰囲気の中で活発な対話が展開されました。

ワーク3:チーム発表・全体議論

選択した2つの未来像について、チーム内で議論した内容を全体に向けて発表しました。塾生からは「最初にその未来像を選択した時点から、チーム内での対話を経て少しずつ意見や捉え方が変わっていく」というバックキャスティングならではのプロセスを体感したとの感想が聞かれました。また、他チームの発表を聞くことで、同じ未来像を選んでいても受け取る側と伝える側の視点の差など、捉え方に多様な違いがあるという新たな気づきを得ていました。どのチームも未来像をしっかりと「自分事」に落とし込んで議論していました。

ワーク4:自身の研究への示唆・課題の検討(個人ワーク)

これまでのチーム議論を踏まえ、提示された未来の視点を自身の具体的な研究テーマへと落とし込む個人ワークを行いました。

ワーク5:全体共有・クロージング

今年度は、未来事象から「ありたい未来」を逆算するバックキャスティングを体験しました。
最後に総括として、宍戸厚 機構長から「かつて馬車が自動車に置き換わり、30年前にはスマホの普及が予想できなかったように、AI時代の未来はフィジカルAIが実装され、想像を超える世界へと向かうかもしれないという展望が示されました。社会実装まで長期間を要する基礎研究は、すでに『20〜30年後の未来』を研究していることに他ならず、だからこそ今、この共創の視点を持つことが大切です。そして、塾生の皆さんには、純粋な知的好奇心のための研究と、社会ニーズに応える活動を戦略的に切り分ける『研究時間のポートフォリオ』という捉え方を持ち、自身の専門領域だけに閉じこもることなく、広い視野を保ち続けてほしいと願っています。日頃の忙しい研究生活の中でも、たまに社会との接点となる『Visionary Initiatives (VI)』という名の北極星を見上げる心の余裕を持ち、本ワークショップでの気づきが今後の融合研究や新たなイノベーション創出の源泉となることを期待している」との激励を最後に、会は締めくくられました。

宍戸機構長

最後に、各自が作成した「自身の研究への示唆シート」をもとに、1分ずつのリフレクション(振り返り)発表を行いました。
医歯学系の塾生からは「体外から無線で薬出をコントロールする材料の発想や、社会実装を見据えた簡便さ・低価格化の重要性に気づいた」との声が上がり、逆に理工学系の塾生からも「医療現場における医師としてのリアルな実体験の声を聞けたことが、新たな視点を得る大きな契機となった」との気づきが共有されました。バックグラウンドの異なるメンバーが批判で終わらせず発展的なアイデアへと昇華させる共創の価値を全員が実感し、ファシリテーター陣からも、「感情は数値化すればいい、ストレス耐性を付ければいいという視点は今までになかった」「想定した未来を自分事にし、課題を解決していくプロセスの中で、塾生たちから次々と発想が溢れ出てくる姿が非常に良かった」とのコメントが寄せられました。

ファシリテーター

根本 かおり(GVCC特任准教授/株式会社博報堂 未来洞察プロジェクト代表)
新田 元(GVCC副センター長/リサーチディベロップメント機構 副機構長/理事特別補佐)
新井 慶子、安仁屋 文香、飯間 伸、保科 優、真板 綾子(リサーチディベロップメント機構 URA)
伊藤 慎之介(株式会社博報堂 生活者発想技術研究所 研究員)

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