「Science Tokyo 医工共創サマープログラム」を実施

2026年9月29日 公開

医療現場と理工学をつなぐ異分野協働型PBLとして、学士課程学生が「病院での体験」を新しくデザイン

東京科学大学(Science Tokyo)生命理工学院およびヘルスケア教育機構は、8月18日、19日、25日、27日の4日間にわたり、「Science Tokyo 医工共創サマープログラム」を実施しました。

本プログラムは、理工学系と医歯学系の学士課程学生が、医療現場に関わる身近な体験や課題を題材として、デザイン思考を用いながら課題発見、アイデア創出、プロトタイピング、成果発表までを体験する異分野協働型PBL(Project-Based Learning:課題解決型学習)です。教育の質向上サイクル推進助成(Education Enhancement Cycle Grant:EdCycle Grant)の支援を受け、医療現場と研究現場を接続する教育モデルの構築を目指して実施されました。

参加者は、生命理工学院、理学院、医学部医学科、歯学部口腔保健学科衛生学専攻の学士課程学生16人でした。また、歯学部歯学科の学生1人もDay 1〜2のオンラインワークショップに参加しました。学部低学年を中心に、理工学系・医歯学系の異なるバックグラウンドを持つ学生が混合チームを組み、医療現場の体験を新しくデザインする課題に取り組みました。

本プログラムは、2026年2月に実施した「臨床現場・早期体験実習(異分野融合教育)トライアル」を発展させた取り組みです。前回のプレイベントでは、理工系学士課程学生が医療現場を見学・体験し、グループ討論と発表を行いました。今回のサマープログラムでは、対象や内容を拡充し、デザイン思考ワークショップ、病院・診療科見学、成果発表、研究室・施設見学を組み合わせた4日間のプログラムとして実施しました。

オンラインワークショップでデザイン思考を学ぶ

Day 1、Day 2は中澤雄一郎氏によるデザイン思考ワークショップを中心に、オンラインで実施しました。

Day 1では、デザイン思考の概要説明、アイスブレイク、インタビュー準備、ペアインタビュー、問題定義、チームブレスト、アイデア選択、プロトタイプ作成を行いました。Day2では、ユーザーテスト、改善サイクル、ストーリーテリング、ピッチ資料作成、病院見学に向けた倫理・注意事項レクチャーを実施しました。

学生たちは、初対面の異分野学生と協働しながら、短時間で課題を捉え、アイデアを発散・収束させ、具体的な提案へと形にするプロセスを体験しました。また、生成AIも活用しながら、アイデアを可視化し、発表資料として整理する方法を学びました。

オンラインでのデザイン思考ワークショップ

湯島キャンパスで病院・診療科を見学

Day 3は、湯島キャンパスで病院・診療科見学を実施し、救急災害医学分野・救命救急センター、検査部・輸血部、オーラルヘルスセンター、顎顔面補綴外来を見学しました。

見学を通じて、医療現場の実際の動線や設備、業務上の工夫、患者対応、医療従事者の課題を学びました。救急医療における時間短縮を意識した空間設計、検査部門における自動化、医科歯科連携、顎顔面補綴における材料・デザイン・患者心理の関わりなど、学生は多様な視点から医療現場を観察しました。

見学後には、各学生が異なる見学先で得た気づきを共有し、「病院に行く体験」をテーマにグループ討論を行いました。医療現場を単に見学するだけでなく、患者・家族、医療従事者、病院環境のそれぞれの視点から課題を捉える貴重な機会となりました。

湯島キャンパスでの病院・診療科見学

横浜キャンパスで成果発表会、研究室・施設見学を実施

Day 4は、横浜キャンパスで成果発表会、研究室・施設見学、修了式を実施しました。午前中の成果発表会では、対面に加え、湯島キャンパスで病院見学に協力した教職員にもオンラインで共有するハイブリッド形式で行いました。

最終成果発表の共通課題は、「病院での体験を新しくデザインする」です。学生たちは、オンラインワークショップで学んだデザイン思考の方法論と、湯島キャンパスでの病院・診療科見学で得た気づきをもとに、患者や家族が病院で感じる不安、緊張、見通しのなさ、医療現場での課題などに着目し、4チームに分かれて発表を行いました。

発表では、医療現場での観察を出発点に、患者・家族の視点、医療従事者の視点、理工学的な発想を組み合わせた提案が示されました。質疑応答では、実現可能性、医療現場での受け入れ、患者への配慮、技術導入時の課題などについて意見交換が行われ、学生にとって医工共創の可能性と難しさを学ぶ機会となりました。

午後は、PEECsラボ、島津分析室、NMR室、有機合成実験室などの施設見学に加え、がん、iPS細胞、GPCR、創薬・有機合成に関連する研究室見学を行いました。

最後にリフレクションとアンケートを実施し、修了式では、粂昭苑学院長に代わり、湯浅英哉系主任が学生に修了証を授与しました。

横浜キャンパスでの修了式後の集合写真

学生アンケートでも高い満足度

プログラム後のアンケートでは、オンラインワークショップ、湯島キャンパスでの病院見学、横浜キャンパスでの研究室・施設見学のいずれも高い評価を得ました。

Day 1〜2のオンラインワークショップでは、ワークショップ満足度が平均9.50(10点満点)、異分野協働の実感が平均4.62(5点満点)でした。Day 3の病院見学では、現場見学・対話の有益性が平均9.44(10点満点)、医療従事者側の視点・環境への理解が平均9.31(同)でした。Day 4の最終アンケートでは、プログラム全体の総合満足度が平均9.25(同)、今後の進路・学習意欲への影響が平均9.00(同)となりました。

自由記述では、「病院見学や研究室見学など通常では経験できない体験ができた」「医工連携について興味が高まった」「医科歯科系の学生と理工学系の学生が交流できた点が非常に良かった」「今後も同様のプログラムがあれば参加したい」といった感想が寄せられました。

また、「病院見学を先に実施し、その後に課題抽出やアイデア創出を行う構成も検討してはどうか」「発表資料やAIによるブラッシュアップの時間をもう少し確保するとよい」といった改善提案もあり、次年度以降のプログラム改善に向けた示唆も得られました。

今後に向けて

本プログラムは、医療現場の課題を起点に、理工学・医歯学・デザイン思考・アントレプレナーシップを接続する教育改善モデルとして実施されました。今後は、今回得られた学生アンケートや教職員からのフィードバックをもとに、プログラム構成、時間配分、病院見学とワークショップの順序、成果物のブラッシュアップ、認定ポイント・単位化の設計などを検討し、プログラムをさらに改善していきます。

生命理工学院およびヘルスケア教育機構では、今後も医療現場と研究現場を接続し、学生が異分野協働を通じて社会課題を考える機会を創出することで、Science Tokyoらしい全学横断型の医工共創教育プログラムとして発展させていく予定です。

関連教職員・協力者

本プログラムは、生命理工学院を主催部局とし、ヘルスケア教育機構および生命理工学院の教職員の協力により実施しました。

主な関係教職員・協力者は以下の通りです(敬称略)。

  • 生命理工学院:粂昭苑、湯浅英哉、秦猛志、中村信大、小倉俊一郎、白木伸明
  • ヘルスケア教育機構:依田哲也、中川美奈、鶴田潤、山口久美子、金子英司
  • オンラインデザイン思考ワークショップ:中澤雄一郎
  • 湯島キャンパス見学協力:森下幸治、安達朋宏、大川龍之介、藤代瞳、市村直也、大友直樹、松尾浩一郎、佐藤瞳、宮島沙紀、服部麻里子、村瀬舞、原口美穂子
  • 事務支援:吉村玲子、米光日和、山下梨絵、小林純子

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東京科学大学 生命理工学院
秦 猛志