東京科学大学における成長戦略と一体化したエンダウメント戦略

2026年5月11日 公開

東京科学大学(Science Tokyo)は、1月23日付けで国際卓越研究大学に認定され、その事業計画である「研究等体制強化計画」が、2月27日付けで文部科学大臣より認可されました。これに基づき、計画初年度となる2026年4月1日より事業を開始しました。
本学は、(1)計画の重要な目標である寄附金等による大学独自基金の構築、(2)寄附金や基金の運用益を活用した次世代を担う研究者や博士人材の育成、さらには(3)大学が寄附者や連携するパートナーと共に創出するイノベーションの成果の社会還元の循環を、本学の成長戦略と一体化したエンダウメント戦略として推進します(図1)。

図1. 東京科学大学におけるエンダウメント戦略

長期運用戦略

エンダウメントファンドを、(1)寄附資金、(2)産学連携の大学帰属収益等の内部資金、(3)投資収益の再投資 として定義し、現時点では中長期のポートフォリオ投資方針に基づくリスク運用136億円と、ペイアウトに備え流動性も意識した安全性重視の運用84億円の合計220億円を、それぞれの取れるリスクに応じて運用していきます。
国立大学法人は収入面でインフレ連動性が低い一方、費用面においては、人件費およびエネルギーコストといったインフレ連動性が高いという財務特性も踏まえ、戦略的なアセット・アロケーション(円貨/外貨、株式/債券、伝統資産/オルタナティブ資産の配分)を行います。
また、運用においては、本学が持つ先端科学技術動向に関する知見(本学の設置するシンクタンクI4Cが社会に発信する知見等も含む)も積極的に活かし、中長期的な収益率を確保していきます。さらに大学全体の財務特性を考慮したアセット・アロケーションに加え、個別ファンドの選択技術の高度化にも取り組みます。

  • I4C(I4Collective)は「社会的インパクトのためのイノベーションを高い倫理感を持って分析する集団(Investigation with Integrity, Innovation for Impact Collective)」を原義とする、理事長直下に置かれた分析組織で、透明性のある運営で知の価値の最大化による「善き社会の実現」に向けた社会レベルの戦略決定に資する調査分析および情報提供等を行う。

CIOの就任

本エンダウメント戦略を担う経営陣の一人として、2026年4月1日付けで、前BNPパリバ・アセットマネジメント株式会社CEO・代表取締役社長の土岐大介氏が、非常勤理事(資産戦略担当)として着任し、5月1日付けでCIO(チーフインベストメントオフィサー)に就任しました。
土岐氏は、これまで外資系金融機関30年、うち外資系資産運用会社3社においてCEOを通算17年務めた豊富な経験と、ファイナンス知識を活かし、大学経営、人材育成、イノベーション創出をつなぐエンダウメント戦略を推進します。
本学では、すでにCFOで国際卓越研究大学計画を統括する井上光太郎理事の下、同大学大学院の修了生である資産運用の専門家が複数参加し、運用体制の整備および高度化を図っています。今後は、これをさらに大学全体の長期の成長戦略・財務戦略の一部として組み込んでいきます。土岐氏は、国内外の金融機関との幅広いネットワークを活かし、健全で効率的な資金循環を駆動するシステム構築により加速化する役割を担います。また、「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」という本学のミッションの下設置された分野横断型研究教育組織VI(Visionary Initiatives)を通じ、国内外の多様なステークホルダーとともに、ありたい未来に向けた社会的インパクトを創出していきます(図2)。

図2. 資産運用管理体制

資産運用専門人材の略歴

CFO: 井上光太郎

  • 2024年10月-2026年3月:本学 理事(財務担当)
  • 2026年4月-現在:本学 理事(国際卓越研究大学計画統括・財務担当)
  • その他対外活動:元日本ファイナンス学会会長(現理事)、元Asian Finance AssociationのBoard Member、日本経営財務学会評議員

CIO: 土岐大介

  • 2002年7月-2011年1月:ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント代表取締役社長
  • 2014年4月-2015年9月:東北大学総長特別補佐
  • 2016年1月-2018年6月:ドイチェ・アセット・マネジメント 代表取締役社長
  • 2019年1月-2026年3月: BNPパリバ・アセットマネジメント CEO・代表取締役社長
  • 2026年4月-現在:本学 理事(資産戦略担当)
  • 2026年5月-現在:本学 CIO

資金運用管理委員会委員長: 加藤康之氏(東京工業大学修士、京都大学博士)

  • 1980年4月-1998年3月:野村総合研究所
  • 1998年4月-2010年3月:野村證券 執行役、金融工学研究センター長
  • 2011年4月-2019年3月:京都大学経営管理大学院 教授
  • 2017年4月-2026年3月:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)経営委員
  • 2021年5月-現在:京都先端科学大学 国際学術研究院 教授
  • 2025年9月-現在:本学 資金運用管理委員会委員長

運用・リスク管理体制

本学は、2025年5月、「アセットオーナー・プリンシプル」の趣旨に賛同し、その受け入れを表明しました。資産運用の高度化に積極的に取り組むとともに、中長期的な観点で策定する運用方針に基づき、運用目標達成に必要な人材の確保および意思決定プロセスを強化した組織体制整備を進めています。
これまで本学は、理工系大学として、ファイナンスや金融工学の専門人材を数多く輩出してきました。そうした人材と知見を活かし、本学は運用体制とリスク管理体制の両面を強化しており、3線防衛による適切なリスクガバナンス体制の構築を進めています。リスク管理を行う資金運用管理委員会の委員長は、運用執行には関与しない外部有識者にするなど、けん制を強化しています。

3線防衛による適切なリスクガバナンス体制の整備

第1線:

  • CIOを中心に投資担当として高い知見と豊富な運用経験を持つ外部専門人材、資産運用事務室が、CFOへの運用方針提案、承認を受けた運用方針の執行・管理を 実施し、CFOに報告
    ※資産運用事務室は2026年4月に設置しています。

第2線:

  • 外部有識者が委員長、かつ構成員の半数以上を占める資金運用管理委員会の審議体制とモニタリング機能によるけん制
  • 委員会は、CFOから提案の運用方針、運用計画、基本ポートフォリオ、リスク等について審議

第3線:

  • 第1線、第2線から独立した学内の監査室において運用業務の管理体制検証

人材育成

2026年4月、資産運用事務室を設置し、外部専門人材による指導や研修等を通じて人材の育成を行っています。また、資産運用に関心のある大学院生にインターンとして参加してもらうなど、内部人材の育成体制の構築等を進めています。
これらの取組を通じて、大学独自基金が将来的に本学の中核的な自己財源として確立することを目指すとともに、ステークホルダーをはじめとした社会一般に対し適切な情報提供を行ってまいります。

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