東京科学大学は, 同窓会組織である蔵前工業会との共催で, 2025年10月15日(水)と16日(木)の2日間, 大岡山キャンパス蔵前会館にて, 「Dr’s K-meet(博士後期課程学生のための蔵前就職情報交換の集い)」を開催しました。
このイベントは, 博士人材(博士後期課程学生,ポスドク)を対象としたキャリア関連フェアとしては国内最大級です。東京工業大学の時代から通算して8回目で,昨年10月に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して東京科学大学(Science Tokyo)が誕生してからは初めての開催となりました。当日は, 外資系企業を含む72社が参加し, 昨年度よりも多い300名を超える博士人材(他大学含む)が企業との情報交換を行いました。
最近では, 政府が「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会」を立ち上げるなど, 日本企業が価値創造力を高め, イノベーションと経済の好循環を実現することで競争力を復活させるために, 博士人材が企業で大きな役割を果たすことが期待されています。
本イベントは, 博士人材のみを対象とし, 学生が企業に自らをアピールする場, および企業が学生に対して説明する場をそれぞれ設け, 双方向からマッチングを促進することを特徴としており, 毎年, 企業および学生双方から大きな注目と高い評価を集めています。
当日は, はじめに東京科学大学の関口秀俊執行役副学長(教育担当)が企業参加者に対して挨拶を行いました。本学の博士後期課程において専門教育以外の教育にも力を入れ,大学と同窓会組織が連携して学生のキャリアを積極的に支援していることに触れ,本イベントに参加いただいた企業の皆様への感謝と,博士人材が交流を深める貴重な機会となることへの期待について話がありました。また, 大学が統合し1年が経過し, 理工学と医歯学を融合させることで, 「科学の進歩」と「人々の幸せ」とを探求し, 社会とともに新たな価値を創造することを目指した取組みを着実に進めていることについても説明がありました。
続いて, 博士後期課程学生が企業関係者に自己アピールを行うポスターセッションが行われました。自ら参加を希望した博士後期課程学生29名(内,留学生 8名)が, 現在の研究内容, 研究を通じて培った知識やスキル, 自身の強み, 企業でやってみたいこと等をそれぞれポスターにまとめ, 企業の人事・研究関係者に直接説明し, 質問やコメントをいただきました。今回は初めて医歯学系の学生も参加しました。
博士後期課程学生は日頃, 学術的な発表を行う機会はありますが, 専門外の方にも理解できるように自らの研究について説明し, また、将来企業で活躍したいことについて自己アピールを行う機会はほとんどありません。参加学生は, 事前に蔵前工業会くらまえアドバイザーやアントレプレナーシップ教育機構の教員から, 発表についてアドバイスを受け, 練習を重ねて臨みました。
参加した学生からは, 「企業が博士学生の採用において, 研究内容のマッチングだけでなく, 論理的思考力ややる気を同等かそれ以上に重視していることが分かり, 自身の志望業界選定に対する考えが変わった」という意見がありました。また, 「分野が全く違っていても聞きに来てくださり興味を持ってもらえた」「自分では関係が薄いと思っていた業界の方からも関心を持っていただき, 視野が広がった」といった感想が聞かれました。
また,一日目終了後には, 蔵前会館においてポスターセッション参加学生による交流会を開催しました。博士学生同士が分野や所属を超えて, 研究内容やキャリアについて深く語り合う貴重な機会となりました。
続いて実施された企業ブースセッションでは,両日で計72社の博士人材採用に関心のある企業がブースを設けていただき,訪問した学内外の博士人材(計約300名)と,業務内容や将来のキャリア構築等について情報・意見交換を行いました。また,留学生向けに英語で対応する企業もありました。
ポスターセッションで発表を行った学生も,発表に関心を持っていただいた企業を含め企業ブースに積極的に訪問し,企業やそのビジネス、研究開発などについて理解を深めました。
【東京科学大学(理工学系)の博士後期課程における教育】
東京科学大学(理工学系)の博士後期課程においては,世界最高水準の研究環境での卓越した専門教育だけでなく,アントレプレナーシップ科目と文系教養科目をも必修とする特徴的な教育を実施しています。
特に,アントレプレナーシップ教育は,起業のみを対象としたものではなく,卒業後に企業やアカデミアにおいて自身が大学で培った知識や経験を活かしてどのように活躍していくのかを主体的に考え, 未来社会の創造を主導する人材を育成することを目指しています。具体的には,将来のキャリア構築に役立つ実践的な知識やスキルを修得したり,国際性を高め,リーダーシップや価値創造力を身に着けることを目指しており,専門の異なる博士後期課程学生が社会的課題を解決するために新たなビジネスを共同で考えるPBL(Project Based Learning)型の科目等,広範囲な教育を実施しています。
さらに,学生が自らのキャリアプランに対応した能力を身に着け,自身の目指すキャリアパスを実現することができるよう,多様なキャリア関連プログラムを提供しており,本イベントもその一環となっています。
アントレプレナーシップ教育機構キャリア教育実施室
E-mail: career_edu@cee.isct.ac.jp