ロボット工学の世界的パイオニア 森政弘名誉教授が逝去

2025年2月21日 公開

ロボット工学の世界的パイオニアである東京工業大学(現 東京科学大学)森政弘名誉教授が1月12日に逝去(享年98)されました。

森政弘名誉教授

森氏は約40年にわたりロボット工学研究に従事した、世界的に著名なロボット工学研究者です。とりわけ、「不気味の谷」と呼ばれる現象を提唱し、ロボット開発に大きな影響を与え続けています。不気味の谷について森氏は「ロボットをだんだんと人間に似せてくると親しさが湧いてきます。ところが、似れば似るほど、ある段階で不気味で気持ち悪くなり、見るのも嫌になります。なぜ、そのような感情が起きるのかはわかりません」と述べています。

また、森氏はロボット工学を推進するためにロボットコンテスト(ロボコン)を創設しました。ロボコンは1988年から始まり、毎年NHKで放映されています。

森氏はかつてCNNの取材に対して「日本のロボット工学は世界をリードしていますが、その一番大きな理由はロボットを人間の敵とみなさず、仲間として見るという思想にあります。仏教学者でもある私の立場から見ても、将来のロボット工学研究については『倫理観』が極めて重要です。そのためには、進歩や物欲ばかり追求し、外的環境に振り回されてはいけません。一旦、歩みを止めて、内なる心を静かにし、自らの心を自らが制御し、心を自然の状態にすることが不可欠なのです」と述べています。

AIとロボットが急速に進展する近年においても森氏の研究や思想はますます重要なものとなっています。

森名誉教授プロフィール

森 政弘(もり まさひろ)。1969年に東京工業大学工学部制御工学科教授に着任。1987年に退官。技術的、哲学的観点からロボット工学に多大な業績を残している。1970年に「不気味の谷」現象を発見し、大きな反響を呼んだ。1975年に開催された沖縄海洋博において、ロボットが群れをなして自律的に動く「みつめむれつくり」を出展した。1971年から研究室で二足歩行ロボットの研究も開始し、膝が伸縮するタイプの二足歩行ロボットとその制御理論を開発。小手先の技術だけでなく、歩行に関する創造的な観点と哲学が必要であると考えた。

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