このたび、東京科学大学(Science Tokyo)の末松安晴栄誉教授ならびに伊賀健一栄誉教授の卓越した業績が、それぞれIEEEマイルストーンに認定されました。
IEEEマイルストーンは、電気・情報工学分野で世界最大(会員数約50万人)の専門家組織であるIEEEが電気・電子技術やその関連分野における歴史的業績を認定する制度です。開発から25年以上が経過し、社会や産業に大きな貢献をしている歴史的業績を認定する国際的な制度であり、古くは「ボルタの電池の発明」や「マクスウェルの方程式」、「半導体集積回路」など、名だたる発明の数々が認定されています。
Science Tokyoでは、これまで加藤与五郎名誉教授・武井武名誉教授による「フェライト」、古賀逸策名誉教授による「温度無依存水晶振動子」が認定されており、今回の2件を加えると国内の大学では最多の4件となります。
今回認定された業績の概要は以下の通りです。
業績概要
末松安晴栄誉教授
長波長帯光ファイバ通信のための単一モード半導体レーザ
Single-mode semiconductor lasers for long-wavelength optical fiber communications
1978年に、東京工業大学(当時)の末松安晴博士らは、分布ブラッグ反射器(DBR)を用いた長波長単一モード半導体レーザの動作を世界で初めて実証し、1980年には高速直接変調下でも単一モード動作を達成しました。さらに1983年には、位相シフト型分布帰還(DFB)レーザおよび波長可変レーザの初の実現に成功しました。これらの画期的な業績は、テラビット毎秒級の波長分割多重(WDM)光ファイバ通信システムの実現を可能とし、インターネットを中核とする現代の情報社会の基盤構築に多大な貢献を果たしました。
伊賀健一栄誉教授
面発光半導体レーザ
Vertical-cavity surface-emitting lasers
単一モード・低電力動作、モノリシック製造性、広域連続波長掃引性を持つ半導体レーザの創出を目指して、面発光レーザ(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser:VCSEL)が、東京工業大学(当時)の伊賀健一博士によって1977年に発明されました。同博士らは、1979年に世界初の電流注入型VCSELの動作を実証、1988年には室温連続発振、1992年には広域連続波長可変動作を実現しました。VCSELは後に多様な分野において産業化され、LANやデータセンター内の光配線をはじめ、マウス、レーザープリンター、スマートフォンの顔認証システム、さらにはモバイル機器や車の先進運転支援システムのLiDARなど、21世紀の情報社会を支える基盤技術となりました。
IEEEマイルストーン認定記念式典
今回の認定を記念して10月28日、IEEEマイルストーン認定記念式典がScience Tokyo大岡山キャンパスで行われました。
西9号館ディジタル多目的ホールで行われた記念式典には、本学関係者、IEEE関係者、文部科学省および各工業界の方々など、合わせて約170人(うちオンライン参加40人)が出席されました。
贈呈式では、IEEEのキャスリーン・クラマー会長がIEEEマイルストーンの歴史と意義について述べられ、クラマー会長よりIEEEマイルストーン記念銘板2件が、Science Tokyoの大竹尚登理事長に贈呈されました。大竹理事長がIEEEマイルストーン記念銘板拝領の謝辞を述べた後、文部科学省の淵上孝研究振興局長、富士通株式会社の桑原秀夫名誉フェローから祝辞が述べられました。
記念講演会
続いて行われた記念講演会は、最初にIEEE東京支部で2019年から2022年にわたり Historical Committee Chairを務めた鈴木浩博士が、「IEEEマイルストーンの意義」と題して講演されました。
その後、末松栄誉教授が「長波長帯単一モード半導体レーザ 〜インターネットの中核を支える光ファイバ通信を可能にした動的単一モードレーザ〜」と題した講演で、長波長帯単一モード半導体レーザの黎明期の研究から、現在のインターネット社会を支える大容量光ファイバ通信システムへの発展に至る歴史を振り返りました。続いて、伊賀栄誉教授が「面発光半導体レーザ:その発明と一里塚、そして光インタコネクトとセンシングを軸とする広範囲の応用へ」と題し、面発光レーザ(VCSEL)の発明から約半世紀にわたる研究開発の歩みとともに、光センシングやデータセンターなどへの幅広い応用展開について講演しました。記念講演会は盛況のうちに終了しました。
記念講演会終了後は、西5号館つばめテラスに場所を移してレセプションが行われました。益一哉元東京工業大学学長のあいさつに続いて、カリフォルニア大学バークレイ校のコニー・チャン-ハスナイン名誉教授の祝辞と乾杯の発声により祝賀会がスタートし、参加者は和やかに歓談しました。
記念銘板
贈呈された記念銘板は、大岡山キャンパス70周年記念講堂の近くと、すずかけ台キャンパス内の石碑の上に各1基が設置されています。また、東京科学大学博物館(大岡山キャンパス百年記念館2階)にも2基が展示されています。
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更新履歴
- 2025年12月18日 本文の編集を行いました。
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