第6回インペリアル・カレッジ・ロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム(Imperial-Science Tokyo Global Fellows Programme 2026)を実施

2026年10月30日 公開

インペリアル・カレッジ・ロンドンの本館前で

2026 年 9 月 6 日から 11 日にかけて、第 6 回インペリアル・カレッジ・ロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム(Imperial-Science Tokyo Global Fellows Programme 2026)を実施しました。

本プログラムは、東京科学大学と英国インペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、インペリアル)が共同で2018年に立ち上げた国際交流プログラムであり、専門分野や国籍の垣根を超えたコミュニケーション力の醸成やリーダシップの育成、若手研究者のネットワーク構築等を目的としています。2019年のロンドン開催後、コロナの影響による3年間の実施中止を経て、2023年から日本、ロンドンで隔年開催し、今回のプログラムが6回目の開催となりました。

本プログラムは、国連が提言する持続可能な発展に向けた世界を変える17の目標SDGs(Sustainable Development Goals)をプログラムのテーマとして取り上げてきました。今回のテーマは「Net Zero - Data to Action」(ネットゼロ(※):データから行動へ)。ネットゼロの実現は、エネルギーや都市から、移動や消費に至るまで、社会のほぼあらゆる分野に関わる課題です。17の目標の#7:「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、#11:「住み続けられるまちづくりを」、 #13:「気候変動に具体的な対策を」と関連したテーマです。

※「Net Zero(ネットゼロ)」とは、温室効果ガスの排出量から森林吸収や除去技術による吸収量を差し引き、全体として“実質ゼロ”にすることを意味します。

東京科学大学とインペリアルから各15名、計30名の博士後期課程学生が参加しました。5日間のプログラムでは、テーマに関する講義聴講や専門家との意見交換、関連施設の見学等を通じて、ネットゼロの課題を理解し、エビデンス、創造性、そして協働が、いかにして現実の行動へと結びつくかを探求しました。最終日には、各チームが取り上げた課題を解決するための研究や調査、実践のプロジェクトを提案する発表を行いました。異なるバックグラウンドを持つ者同士がチームとして協働することの楽しさや難しさを見出し、充実した5日間となりました。

本学からは、リベラルアーツ研究教育院の金子宏直准教授、小泉勇人准教授、環境・社会理工学院のブンユボル・サシパ特任講師、国際教育課のスタッフが参画しました。

1日目:チーム作り

初日のオープニングセレモニーでは、インペリアルの自然科学部副学部長マイク・テナント教授が開会の挨拶を行い、様々なバックグラウンドをもつ研究者との協働の重要性を話しました。

その後、参加者たちは6名ずつの5チームに分れ、各メンバーが自己紹介ポスターを使って、専門分野や研究テーマを説明、他のメンバーは熱心に質問をするなど、笑顔を交え、親睦を深めていきました。また、昨年のGFPに参加した本学学生が開発した「Unlock the Sudoku」という、数独をベースとしたゲームでは、参加者たちは、互いに意見を出し合いながら、問題を解いていきました。

午後は応用化学、人工知能、計算モデリング、環境工学、経済学、公共政策などの分野の4人の研究者による講義が行われ、参加者たちは、各分野でのネットゼロに関連した課題や取り組みについて理解を深めました。

GFP開催を紹介する本館ロビーのディスプレイ
開会の挨拶をしたマイク・テナント教授
Unlock the Sudoku
講義を聴く参加者たち

夕方には、インペリアルのキャンパス内にあるパブでウエルカムパーティが開催され、参加者たちは、お喋りを楽しみながら、ロンドンや東京、日英の文化、今回のプログラムテーマに関連したPub Quizにチームで挑戦しました。

Pub Quiz の様子(写真左)と勝利チーム(写真中・右)

2日目:チーム力強化

2日目の午前中は5つの課題をチームでクリアしていく「チームチャレンジ」が行われました。いずれもコミュニケーション力やリーダシップ力、チーム内で協力しあえる信頼関係ができているかがカギとなります。参加者達は頭を悩ませながらも互いに声を掛け合って課題に取り組み、終了後にはチームとしての一体感が飛躍的に高まりました。

チームチャレンジの様子

午後は、インペリアルのサウスケンジントン・キャンパスに隣接している、ロイヤルアルバートホール、ヴィクトリア&アルバートミュージアム、自然史博物館、科学博物館等をチームで巡り、プログラムテーマの「ネットゼロ」に関連した展示や研究成果等を探索し、写真を見せながら、各チームで発表を行いました。

3日目:チームプロジェクト提案に着手

3日目は、プログラム会場をインペリアルのホワイトシティキャンパスに移しました。同キャンパスは、2040年までにネットゼロを達成するという公約を掲げ、ヒートポンプを中核とするシステムを採用し、全電気式で低炭素なネットワークで運用されています。参加者たちは、同キャンパスでのネットゼロへの様々な取り組みについて担当者から説明を受けるとともに、環境汚染や人間の健康への影響など、幅広いテーマに取り組む環境研究グループの 研究者たちから話を聞くことができました。

その後、各チームに分かれ、プロジェクト提案で取り上げる課題とその解決策について、具体的なディスカッションを行いました。

ホワイトシティ・キャンパスの模型を見る参加者たち (写真左)とプロジェクト提案について意見交換をする各チームの参加者たち(写真中・右)

午後はロンドン市内へ戻り、2グループに分かれて、観光ガイドによる、ウォーキングツアーに参加しました。ツアーは、火力発電所を美術館に再生した「テート・モダン」から始まり、テムズ川沿いの観光名所と共に、ネットゼロに関連した建物や施設を巡り、様々な店で賑わう「バラ・マーケット(Borough Market)」で解散しました。その後の自由時間では、チームメンバーたちと食事に出かけるなど、ロンドンの夜を楽しみました。

ツアー出発地点のテート・モダン(写真左)、快晴のテムズ川沿いを歩きながらツアーガイドの話を聞く参加者たち(写真中・右)

4日目:プロジェクト提案の集中検討とポスター製作

4日目は、いよいよプロジェクト提案に本格的に取り掛かり、前日までにグループでまとめた案を基にディスカッションを重ねて、一つのプロジェクト提案を組み立てていきました。専門性や国籍などが異なる、個性豊かなメンバーからは様々な意見が飛び交い、時には議論が白熱して一つのプロジェクト提案に絞り込むのに苦労している様子も見られましたが、皆が根気強くメンバーの意見に耳を傾け、各メンバーがグループに貢献しようとする姿勢を見せていました。
午後は、最終発表に向けて、さらにディスカッションを重ね、ポスター製作に取り掛かりました。

ポスター製作の様子

5日目: プロジェクト提案発表

最終日。プログラムの集大成となるプロジェクト提案発表を行いました。チーム内で作業分担しながらカラーペンと紙だけでまとめた発表用ポスターを使って、5分間の発表に臨みました。

インペリアル・ビジネス・スクールのエンリコ・ビフィス教授、インペリアルのダイソン・スクール・オブ・デザイン・エンジニアリングのセリーヌ・ムジェノ准教授、本学の名誉教授で2025年より、日本学術振興会(JSPS)ロンドン事務所の所長を務めている原正彦博士が、各チームのプロジェクト提案を評価する専門家(Experts)を務めました。また、JSPSからは、佐藤大樹副センター長、山下勇也国際協力員も参加し、博士後期課程学生を対象とした外国人特別研究員招聘事業を説明しました。

チーム1:“Carbon Cutter"
ゴミ箱に小型カメラを装着し、各種ごみの選定と排出される二酸化炭素量を表示するパネルを提案。使用者に自身の食品廃棄習慣が環境に与える影響の理解を深めてもらうとともに、データ収集を行う。
チーム 2:”Turning Civil and Environmental Data into Data Center Selection Innovation”
土木・環境データを活用したデータセンターの立地選定支援を提案。データセンターの廃熱を地域で活用する。
チーム3:”3P’s - Green Health Board for healthier People, Places and Planet”
地域の環境データや、個人が日常生活の中でカーボンフットプリントを削減するために実践できる行動を表示する、地域密着型のインタラクティブボードの設置を提案 。
チーム4:”Loto”
学生の持続可能な活動に対してポイントを与え、そのポイントをクーポンや商品と交換できるようにするアプリケーションを提案。
チーム5:“What’s Next”
個人が感じる短期的なコストと長期的なメリットのギャップを埋めるため、持続可能な習慣を取り入れることで得られる具体的な経済的・健康上のメリットをユーザーに知らせるアプリケーションを提案。
各チームのプロジェクト提案を評価した3人の専門家

昼食後、3人のExpertsが5日間という短い時間の中で作り上げられた、各チームのプロジェクト提案を評価し、専門家としてのアドバイスを行い、全チームメンバーに記念品が授与されました。

最後には、各チームがチームメイトの健闘を称え、チームコーチやスタッフに感謝の言葉を伝えました。5日間の様々な活動がまとめられた動画を見ながら、あっという間の5日間のプログラムを振り返り、時の流れの早さに驚きながらも、ともに過ごした友人たちとの思い出を共有し、再会を願っていました。ある チームのメンバーたちは、ポラロイド写真を撮り、全員がそれにサインをしました。彼らは、今後また会うことがあれば、そのたびにポラロイド写真を撮り、チーム全員で共有することを約束していました。

なお、本プログラムに参加した科学大生は2026年9月から2027年8月までの期間で最長3か月間、インペリアルの研究室に滞在し、受入教員の指導のもと、実地調査や研究を行う予定です。

国際教育課 海外留学グループ