東京科学大学 齊藤研究室がSEMICON Japan 2025「アカデミアAward」にて優秀賞&スポンサー賞(堀場エステック賞)をダブル受賞

2026年1月27日 公開

2025年12月17日、世界最大級の半導体製造装置・材料の国際展示会「SEMICON Japan 2025」において、東京科学大学(Science Tokyo)環境・社会理工学院 融合理工学系の齊藤滋規研究室が、「アカデミアAward 優秀賞」と「スポンサー賞(堀場エステック賞)」のダブル受賞という栄誉に輝きました。

授賞式であいさつする齊藤教授(左から2人目)

業界を代表する審査員が認めた「次世代の製造基盤」

「アカデミアAward」は、全国から集まった30以上の大学・高専の研究室から、半導体業界への貢献度がきわめて高い研究を選出するものです。審査には、世界をリードするシリコンウエハメーカー、露光・エッチング等の装置大手、精密計測機器メーカーといった、半導体サプライチェーンの中核を担う有力企業の技術幹部が名を連ねています。

齊藤研究室のテーマである「可変曲率吸着面を有する大面積超薄半導体ウエハ用静電吸着装置(A-VCESC)」は、以下の3つの審査基準においてきわめて高い評価を受けました。

  1. 革新性:従来の剛体チャックでは対応不能だった「基板の反り」に対し、メタマテリアル構造で追従・補正するという独自アプローチ。
  2. 市場性:パワー半導体(SiC等)の大口径化や、先端パッケージング(PLP)で顕在化している「基板の反り」による歩留まり低下という「業界の悲願」に対する解決策。
  3. ネットワーク構築力:すでに複数の国内・海外の主要装置メーカーや製造パートナーと具体的な技術検証を開始している社会実装へのスピード感。

技術的ブレイクスルーの背景および解説

これまでの半導体製造プロセスでは、半導体の材料となるウエハという素材を固定する土台は「剛体チャック(形が変わらない固定台)」が当たり前でした。しかし、これでは平らなものしか扱えず、意図せず曲がった部品に対応できないという課題がありました。今回の受賞研究では、「メタマテリアル」と呼ばれる特殊な設計技術を応用。その中でも、引っ張ると膨らむという不思議な性質を持つ「オーセティック構造」を取り入れることで、まるで生き物のように形を変えて対象物にフィットする、これまでにない「インテリジェントな製造ユニット」を開発しました。

「保持」から「インテリジェントな制御」へ:堀場エステック賞の意義

今回、優秀賞に加えて、精密計測の世界的リーダーであるスポンサー企業より「堀場エステック賞」を授与されました。これは、本技術が単にウエハを「掴む」だけの道具ではなく、反りという物理的な課題をリアルタイムに制御し、製造プロセス全体の精度を底上げする「インテリジェントな製造ユニット」として高く期待された結果です。

未来を創る次世代の研究者たち:学生による技術貢献

本プロジェクトの成功は、齊藤研究室に所属する意欲的な学生たちのたゆまぬ研究成果に支えられています。本Awardの審査においても、学生たちの高い専門性とチーム力が評価の大きなポイントとなりました。

研究室のメンバーと担当領域

  • 桜井真希さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 エンジニアリングデザインコース 修士2年)
    非平面上での安定したハンドリングを実現するため、「貼付・離脱の軌道生成」の最適化を主導しました。
  • 後藤亜花里さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 エンジニアリングデザインコース 修士2年)
    半導体製造プロセスに不可欠な環境対応として、「A-VCESCの真空対応化」に向けた開発を牽引しました。
  • 森勇水さん(工学院 機械系 エンジニアリングデザインコース 修士2年)
    構造設計の要として、「オーセティック構造パラメーターの最適化設計手法の開発」に貢献しました。
  • 二木結子さん(環境・社会理工学院 融合理工学系 エンジニアリングデザインコース 修士2年)
    装置の柔軟性と剛性を両立させるべく、「静電吸着モジュールの弾性構造の最適化」を担当しました。
左から、森さん、後藤さん、桜井さん、二木さん ※出典 SEMI
授賞式後の研究室メンバーの集合写真

齊藤滋規教授のコメント

今回の受賞は、学生たちと共に進めてきた「可変曲率」という挑戦が、産業界の切実な課題に対する打開策であることを確信させてくれました。審査に携わった世界的な装置・材料メーカーの方々からも、非常に具体的かつ厳しい、しかし期待に満ちたフィードバックを頂いています。今後はこの評価を糧に、日本発のスタートアップを通じて、グローバルな半導体製造ラインへの実装を加速させていきます。

加速する社会実装とグローバル展開

SEMICON Japan 2025の会期中、齊藤研究室のブースには、国内外の主要な装置メーカー(露光、洗浄、搬送、イオン注入等)の技術責任者が相次いで来訪し、以下のような新たな展開がありました。

  • 大手装置メーカーとの連携:ある国内大手企業からは「未解決の重大課題」として具体的な実証評価の提案を受けました。また別のグローバル大手とは海外本社を含めた次世代ステージへの採用検討が始まっています。
  • 新領域への展開:従来の「前工程」だけでなく、チップレット化が進む「後工程」や、宇宙・航空といった特殊環境下でのハンドリングなど、新たな市場からの引き合いも急増しています。

アカデミアAward 2025 について

本賞は、半導体関連の研究成果の革新性、市場性、産学連携力、プレゼンテーション、次世代育成力を総合的に評価するものです。2025年は、一次審査(書類選考)を通過した精鋭8研究室が最終プレゼンテーションに臨みました。

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