IDCロボットコンテスト大学国際交流大会2026 開催報告

2026年10月23日 公開

IDCロボットコンテスト大学国際交流大会(以下、IDCロボコン)2026が、8月10日から22日にかけて東京科学大学(Science Tokyo)で開催されました。IDCロボコンは、世界各国の学生が混成チームを結成し、ロボットの設計・製作・競技に挑む国際教育プログラムです。1990年に旧・東京工業大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共催で始まり、今年で36回目を迎えました。

今年は7ヵ国・地域から54人の学生が参加し、約2週間にわたり共同生活を送りながらロボット開発に取り組みました。参加者は初対面同士でチームを組み、時間と資材に限りがある中で競技課題の解決に挑みました。

開会式とチーム分け

大会初日には開会式が行われ、歓迎あいさつに続いて参加学生の紹介とくじ引きによるチーム分けが行われました。各チームは異なる国・地域の学生によって編成され、参加者はチームカラーのTシャツを着用して活動を開始しました。競技ルールの説明後、学生たちは早速議論を始め、専門分野や文化の違いを超えて競技戦略やロボットの構想を練り上げました。

くじを引くMITの学生
チーム分け後にTシャツを着て開会式に臨む参加者
対面参加者全員が揃っての記念写真

競技ルール

今年の競技テーマは 「AI To Science(サイエンスに愛〈AI〉を)」 でした。競技テーマには、愛と情熱をもってサイエンスの発展に寄与して欲しいという願いと、AIをサイエンスの発展に大いに活用して欲しいという思い、そして、Science Tokyoにも親しみを持って欲しいという気持ちが込められています。競技ではオレンジのボールとシルバーのボールを使い、オレンジのボールは人間への愛を、シルバーのボールは人工物を代表するロボットへの愛を表しています。

競技はサイバー空間での競技とフィジカル空間での競技からなり、両方の合計得点で勝敗が決まります。競技フィールドは2競技ともに図1のようになっています。

図1. 競技フィールド

サイバー空間での競技では、図1の競技フィールドのモデルと、四脚ロボットGo2のモデルが提供されます。Go2のモデルは拡張することができ、ロボットの四脚と自分たちで追加したアームなどの機構を制御することができます。競技開始時点でオレンジとシルバーのボールを1つずつ積み込むことができ、それぞれの色のついたゴールに対応する色のボールを3分以内に入れると得点となります。この競技で正しくゴールできたボールはフィジカル空間でのアドバンテージとして使うことができます。

フィジカル空間での競技は遠隔操作ロボットと自律制御ロボットが協力してボールを回収し、ゴールへ投入して得点を競います。ロボットの設計・製作技術はもちろんのこと、自律制御ロボットにはAIを用いた画像認識技術、遠隔操作ロボットには正確な操縦技術が求められます。また、遠隔操作ロボットを移動させる手段として四脚ロボットGo2を活用することもできます。

図1の競技フィールドのスタートゾーンAからは自律制御ロボットがスタートし、スタートゾーンBからは遠隔操作ロボットがスタートします。自律制御ロボットは斜面の自陣側半分の領域しか移動することができず、遠隔操作ロボットはスタートゾーンのある台とブロック上しか移動することができません。自律制御ロボットにはオレンジ、シルバーのボールを1つずつ搭載できるのに加えて、サイバー空間での競技で獲得したボールと同じものをアドバンテージとして追加で搭載することができます。

フィールドには人間フィギュアとロボットフィギュアが載ったゴールが配置され、オレンジボールは人間フィギュアのゴールへ、シルバーボールはロボットフィギュアのゴールへ入れる必要があります。また、自陣の人間フィギュアと相手のロボットフィギュアのポーズを、ヒップ部分がゴール表面に接している限りは自由に姿勢を変えることができます。ゴール配置やフィギュアのポーズは試合ごとに変化するため、AIを使った画像認識による判別が重要なポイントとなります。

得点は、正しいゴールに投入したボール1個につき1点で、両方のゴール内に正しい色のボールだけが入っている場合は総得点が2倍になります。試合は2チーム対戦形式、競技時間は3分間です。

ロボットの設計・製作

競技ルール発表後、各チームはロボットの設計・製作を開始しました。

ロボットの製作に使用できるのは、約40種類の部材が入った共通キットと、各チームが購入した部品(購入価格の合計2,000円以内)です。主要な構成要素としては、ゲームコントローラでギヤモータ2つ、DCモータ1つ、電磁石と空気圧アクチュエータを1つずつ操作できるコントローラキット、Raspberry Pi5ボード1枚、Raspberry PI picoボード3枚、ボッシュモータ3個、サーボモータ3個、DCモータ付ギヤボックスセット1つと、12V用4チャンネルモータドライバー、5V用2チャンネルのモータドライバーです。また、構成材としてはMDFボード3枚と3Dプリンター1台が用意されました。さらに、シェアーして使えるレーザーカッター、大型の3Dプリンターも7台用意されました。レーザーカッターはMDFボードを切断するため、また3Dプリンターは締結部品や複雑な形状の部品を製作するためのものです。

大会期間中にはアイデアプレゼンテーションが実施され、インストラクターや技術アドバイザーの助言を受けながら改良を重ねました。製作会場であるものつくりセンターの3Dプリンターやレーザー加工機を活用し、学生たちは試作と検証を繰り返しました。

言語の壁を超え、設計図や実機を囲んで議論を重ねながら、多くのチームが独創的なロボットを完成させました。

配布されたキットの主要部材
アイデアプレゼンテーションを行うパープルチーム
ワークショップでロボットを設計・製作する参加者
フィールドを使って遠隔操作ロボットを調整するレッドチーム

国際交流プログラム

IDCロボコンでは、ロボット開発とともに国際交流も重要な目的の一つです。期間中には、ベアリングやモータ、計測器などを製造するミネベアミツミ株式会社の「X TECH MUSEUM(クロステックミュージアム)」を訪問しました。参加者はものづくりを支える最先端技術に触れるとともに、各国の学生との交流を深めました。また、浜離宮恩賜庭園が見渡せる社員食堂で昼食を提供していただきました。

X TECH MUSEUMを訪問した参加学生たち
浜離宮恩賜庭園が見渡せる社員食堂で昼食を食べる学生たち

地域交流プログラム

期間中には、小学生・中学生を対象とした見学ツアーを実施し、児童・生徒58人に製作中のロボットや競技フィールドを紹介しました。ツアー参加者は、各国の学生との交流やロボットの操作体験を通して、ロボット工学や国際協働への理解を深めました。

レーザー加工機の実演を見る小学生

IDCのOGによる差し入れ

旧・東京工業大学在学中の2002年にMITで行われたIDCロボコン2002に出場し、現在は竹下製菓株式会社の社長である竹下真由さんから主力製品のアイスクリーム「ブラックモンブラン」の差し入れがありました。暑さの中、参加学生はみんなでおいしくいただきました。

山積みされたブラックモンブランを手に取る参加者

最終競技会

大会最終日には最終競技会が開催されました。

各チームは2週間にわたる努力の成果を披露し、予選リーグから白熱した試合が続きました。会場には大学関係者やスポンサー企業、地域の方々が集まり、学生たちの挑戦を見守りました。決勝戦では各チームが工夫を凝らしたロボットで熱戦を繰り広げ、会場は大いに盛り上がりました。

最終競技会のオープニングで選手宣誓をするピンクチーム
決勝戦でのピンクチームの得点の瞬間
決勝戦で勝利の瞬間を喜ぶライトグリーンチーム

結果発表・表彰式

最終的な順位は、サイバー空間での競技とフィジカル空間での競技(最終競技会)の合計得点で決まります。サイバー空間での競技は、最終競技会の前日にオンラインで行われました。これは、海外から参加した学生の時差に考慮するとともに、通信遅延などの混乱を避けるためです。

最終競技会の結果、主な受賞チームは以下のようになりました。

  • 優勝:ライトグリーンチーム
  • 準優勝:ピンクチーム
  • デザイン賞:ブルーチーム
Science Tokyoの井村順一理事(総合戦略・人事システム担当)より優勝メダルを受け取るライトグリーンチーム
ボールさばきで圧倒的な強さを見せたライトグリーンチーム
ライトグリーンチームの遠隔操作ロボット(四脚ロボットGo2の上に載っている装置)
ライトグリーンチームの自立制御ロボット
株式会社IHIの河野幸弘氏から準優勝メダルを受け取るピンクチーム
チームカラーをロボットに配して団結力を発揮したピンクチーム(右:司会の塚越秀行教授(工学院))
ピンクチームの遠隔操作ロボット(四脚ロボットGo2の上に載っている装置)
ピンクチームの自立制御ロボット
日立建機株式会社の竹内裕樹氏からデザイン賞メダルを受け取るブルーチーム
唯一、遠隔操作ロボットに四脚ロボットGo2を使わずに勝負に出たブルーチーム
ブルーチームの遠隔操作ロボット
ブルーチームの自立制御ロボット
IDC Robot Contest 2026 at Science Tokyo

おわりに

IDCロボコンは、ロボット工学を実践的に学ぶとともに、国際的なチームワークやコミュニケーション能力を養う貴重な教育プログラムです。限られた期間の中でロボット開発に挑んだ学生たちは、多くの困難を乗り越えながら成果を形にし、かけがえのない国際交流の機会を得ました。IDCロボコン2026は、参加者にとって技術面・人間面の双方で大きな成長につながる大会となりました。

来年のIDC2027は韓国のソウル大学で開催予定です。

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お問い合わせ

東京科学大学 工学院 准教授 山北昌毅