口腔科学センターキックオフミーティングを開催

2025年4月30日 公開

東京科学大学口腔科学センターは、口腔科学の基礎研究から社会実装までを一貫して推進し、国内外の研究拠点との連携を深めながら、分野の発展に貢献する人材の育成を目指して、2024年4月に創設されました。

2月11日に、その創設を記念し、「口腔科学センター キックオフミーティング」を東京科学大学湯島キャンパスM&Dタワー2階 鈴木章夫記念講堂で開催されました。

当日は、国内外の研究者や関係者を含む約250名の参加者が集まり、口腔科学の未来について活発な議論が交わされました。

第一部では、口腔科学センターの設立の経緯や趣旨、施設の概要、そして今後の展開について説明が行われました。

田中雄二郎学長からは、研究成果を早期に社会と共有し、実際の医療現場や産業界での実装を目指す「開放系」の研究を推進することの重要性と、口腔科学センターにおいて医歯理工連携を実践することへの期待が述べられました。

大竹尚登理事長からは、工学的アプローチの重要性や、東京科学大学の統合によるシナジー効果について言及がありました。医歯学系が持つ臨床面での強みと理工学系の工学的アプローチの融合により、東京科学大学が目指すコンバージェンス・サイエンスへの口腔科学センターの貢献の重要性が強調されました。

田中学長によるあいさつ
大竹理事長によるあいさつ

文部科学省大学研究基盤整備課の柳澤好治課長からは、口腔科学センターが大学統合を象徴する医歯理工連携のモデルとして東京科学大学の研究力を牽引することに加え、国内外の大学や企業との連携を強化し、口腔科学研究の中核的な研究拠点としての地位を確立することで、日本だけでなく世界の医療・学術界に新たな潮流を生み出すことへの期待が述べられました。

古川哲史執行役副学長からは、国際医工共創研究院(2025年7月設立予定)および医歯学と理工学系との異分野融合を促進する考え方やその試みが重要であることが説明されました。これまでの融合が主に臨床診療科と医歯学系基礎分野との「横の融合」に留まっているため、より一層発展するには理工学分野の直接的な参入が不可欠であり、AI、材料学、ロボティクス等を中心とした領域との「縦の融合」の構想および、縦と横の融合をさらに連携させ、「立体的な融合」を目指していく必要性が強調されました。

柳澤課長(文部科学省大学研究基盤整備課)によるあいさつ
古川執行役副学長によるあいさつ

依田哲也歯学部長からは、今回のセンター設立が長年の歯学部の悲願であること、また、この成立に本学歯学部卒業の金子馨先生の御遺志に非常に助けられている旨、説明がありました。

森山啓司口腔科学センター長からは、口腔科学に負託された社会的要請と課題の背景に始まり、口腔科学センターの理念、配置場所や組織構成といったセンターの概要が紹介されました。

依田歯学部長によるあいさつ
森山口腔科学センター長による概要説明

片桐さやか口腔全身健康部門長からは、口腔全身健康部門の成り立ちについての説明がありました。従来歯学部で行っていた「最先端口腔科学研究推進プロジェクト」が、東京医科歯科大学の重点研究領域のひとつの「口腔科学」となり、本学においても継続されていること。また、口腔科学の中の3つのプロジェクト(1. 口腔細菌叢を機軸とした口腔と全身のクロストーク解明、2. がんおよび慢性炎症における頭頸部粘膜微小環境の特性解明と治療法開発、3. 口腔システム―脳連関の統合的解明による早期口腔医療の創発)について解説されました。

猪越正直口腔デバイス・マテリアル部門長からは、口腔デバイス・マテリアル部門の理念や人員構成、研究協力体制の紹介をはじめ、現在進めている口腔機能評価デバイスの開発に関する研究や、新規歯科材料開発を目指した研究の概要、さらに現在整備中の金子記念共同実験施設の一部設備について紹介がありました。

片桐口腔全身健康部門長による部門紹介
猪越口腔デバイス・マテリアル部門長による部門紹介

第二部では、「医歯二元論から出発した我が国の歯科医学の課題」と題した記念講演が行われました。

講師の須田立雄名誉教授は、日本の基礎歯学・生化学分野を代表する研究者の一人であり、骨代謝研究の黎明期から第一線で活躍されてきました。特に、ビタミンDの代謝調節とその臨床応用、また破骨細胞分化因子(ODF/RANKL)に関する研究において世界的な業績を残し、その卓越した成果により日本学士院会員にも選出されています。

須田名誉教授の講演では、自身の経歴として、生い立ちや家系についての紹介、また、歯科医師になってから研究を継続してきた数十年間を、歯学研究の歴史や研究成果とともに示しました。また、医歯二元論について、「医学の中の一診療科としての歯科(一元論)では十分な需要を満たすだけの歯科医療提供や高い専門性への対応に難航したのではないか」と医歯二元論で発展してきた歴史を考察されました。最後には、「Science is fun」という師DeLuca氏の言葉について、「科学はワクワク感を体験させてくれる」「科学は研究者を平等に扱ってくれる」「科学は世界に同好の士と友人を作ってくれる」と解釈を示し、「東京科学大学からノーベル化学賞、そして生理学・医学賞の受賞者が輩出されることを期待しています」とエールを送りました。

須田名誉教授による講演
会場の様子

キックオフミーティングの後にはホワイエで懇親会が開催され、約100名の参加者が口腔科学センターの設立をお祝いし、交流を深めました。東みゆき顧問の進行で、東京歯科大学 口腔科学研究センターの山口朗客員教授、長崎国際大学の中村誠司学長、株式会社ジーシーの篠崎裕代表取締役、本学名誉教授の江藤一洋氏からあいさつがあり、学外からの口腔科学センターへの期待が述べられました。シニアの研究者から若手の学生まで、世代を超えて、東京科学大学の今後の中核の一翼を担う口腔科学センターの門出を祝う記念すべき機会となりました。

懇親会の様子
懇親会の司会を務める東顧問

プログラム

第一部

開会の辞:森山啓司口腔科学センター長
学長あいさつ:田中雄二郎学長
理事長あいさつ:大竹尚登理事長
文部科学省大学研究基盤整備課長あいさつ:柳澤好治課長(ビデオメッセージ)
執行役副学長(研究・産学官連携担当)あいさつ:古川哲史執行役副学長
歯学部長あいさつ:依田哲也歯学部長
口腔科学センターの概要:森山啓司口腔科学センター長
口腔全身健康部門紹介:片桐さやか教授(部門長)
口腔デバイス・マテリアル部門紹介:猪越正直教授(部門長)

第二部

記念講演 「医歯二元論から出発した我が国の歯科医学の課題」
講師:須田立雄名誉教授 座長:依田哲也歯学部長・渡部徹郎教授

閉会の辞:森山啓司口腔科学センター長

口腔科学センターキックオフミーティング開催告知ポスター

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