日米の学生が半導体・AIチップ開発を実践的に学ぶ「UPWARDS Summer Program」を開催
RISC-VマイクロプロセッサとC2RTLを活用した実習、国際交流、日本文化体験を通じて、次世代の半導体人材育成を推進
| 期間 | 会場 | 参加者 |
|---|---|---|
| 2026年8月21日–28日 | 東京科学大学 大岡山キャンパス | 日米4大学・計9名 |
東京科学大学は8月21日から28日にかけて、大岡山キャンパスで「UPWARDS Summer Intensive Program 2026」を実施しました。UPWARDSに参画するボイシ州立大学、ロチェスター工科大学、ワシントン大学から各2名、本学から3名の計9名が参加し、マイクロプロセッサおよびAIチップ開発に関する実践的な体験学習に取り組みました。
学びのスタート:オリエンテーション・講義・国際交流
初日の8月21日は、プログラム概要とスケジュールを共有するオリエンテーションからスタートしました。続いて、工学院 情報通信系の一色 剛教授が講義を行い、参加学生はマイクロプロセッサ技術や半導体分野の最新研究動向を学びました。実習で用いる専門用語や背景技術についても、活発な質疑応答が交わされました。
講義後は、つばめテラスでウェルカムレセプションを開催。リラックスした雰囲気の中で、大学や専門分野の異なる学生同士が交流を深めました。
RISC-VとC2RTLで、AIチップ開発を「手を動かして」学ぶ
参加学生は、RISC-Vマイクロプロセッサを活用したAIアプリケーション開発に取り組むとともに、本学が開発したC2RTLハードウェア・ソフトウェア協調設計環境を利用し、AIチップ開発の基礎から応用までを学びました。自由課題では3名ずつの3チームに分かれ、それぞれの関心や習得レベルに応じたテーマに挑戦しました。
技術だけではない学び:日本文化を五感で体験
実習活動に加え、日本ならではの伝統文化や価値観への理解を深めるため、鎌倉市内の宝庵で茶道を体験しました。今回は「夏のお茶会」として、「水」をテーマに五感で「涼」を味わう趣向が用意されました。
「滝」の掛け軸、水や夏にちなんだ茶碗、静寂の中で耳を澄ます水の音、参加者が一輪ずつ生けた夏の花、そして手に伝わるお茶の温もり。参加学生は、おもてなしの心や茶道の作法だけでなく、自然の移ろいを感じる日本文化の感性にも触れました。
茶道体験後は、鎌倉を代表する寺社仏閣を見学。歴史ある建築物や庭園、文化財に触れ、日本の歴史や精神文化への理解をさらに深めました。
成果発表会・修了式:8日間の学びを言葉にする
最終日の8月28日には成果発表会を開催し、参加学生がプログラム期間中に取り組んだ内容や得られた学びをグループごとに発表しました。半導体を専門的に学んだ経験のない学生も、実習や配布教材を活用しながら学習を進め、マイクロプロセッサやAIチップ開発への理解を深めました。
発表後には、参加した9名全員に林 宣宏副学長(国際連携・国際教育担当)から修了証書が授与されました。学生たちの表情からは、プログラムをやり遂げた達成感と充実感がうかがえました。
一色 剛教授のコメント
今回のプログラムでは、RISC-V マイクロプロセッサと、私たちが開発してきた C2RTL を用いて、ソフトウェアの記述から実際のハードウェア設計へとつながる一連の流れを、学生の皆さんに体験してもらいました。
今回初めてのマイクロプロセッサ実習であったため、こちら側も手探り状態で実習準備したこともあり、色々改善点が明らかになりましたが、実習参加学生から改善に向けた貴重なコメント・アイディアを色々頂きましたので、来年度以降、実習のさらなる充実化を図っていきます。
半導体やプロセッサを専門としていない学生にとって、短期間でこれらの技術を理解し、自分たちのアイデアを形にすることは決して簡単ではありません。それでも、日米の学生が互いに教え合い、議論しながら課題に取り組み、最終的にはそれぞれの成果を発表できたことを大変うれしく思います。
AI の急速な発展に伴い、これからはソフトウェアだけでなく、それを効率よく実行するプロセッサや AI アクセラレータを含め、ハードウェアとソフトウェアを一体として考えることがますます重要になります。C2RTL が、学生の皆さんにとってその世界への入口となり、将来、半導体や AI 分野で新しい技術を生み出すきっかけになればと期待しています。
参加学生の声
ラル・アビルさん 学士課程2年 / ワシントン大学
CPUやアクセラレータの接続階層、FPGA実装などのシステム構造を理解し、AIを活用した現代的なコーディングやJPEG圧縮技術などの実践的手法を習得しました。プロジェクト研究を通じて専門知識を深めるとともに、背景や国籍の異なる仲間との交流から、今後のキャリアや人生に活きる多様な視点を得ることができました。
リバサイ・イッサック・クリストファーさん 学士課程4年 / ボイシ州立大学
C言語のコードをRTL(レジスタ転送レベル)へ変換するスキルの重要性と、アクセラレートされたハードウェアがニッチなプロジェクトにもたらす大きなメリットについて学びました。
加藤 諒一さん 学士課程3年 / 物質理工学院
アーキテクチャをC++で設計し、シミュレーションするというアイデアや、自分の専攻から離れたコンピュータサイエンスを学べたことが新鮮でした。英語のみで新しい学問を習得し、プロジェクトへつなげる経験を通じて、困難を乗り越える力や自信も得られました。さらに、海外の仲間とのネットワークを築けたことも大きな刺激になりました。
林 采炫さん 修士課程2年 / 環境・社会理工学院
AIソフトウェアをハードウェア言語に直接つなぐことができるC2RTLについて学びました。また、米国の学生とともに作業したことで、グローバルなコミュニケーション能力も向上しました。
UPWARDS for the Future とは
UPWARDS(University Partnership for Workforce Advancement and Research & Development in Semiconductors)for the Futureは、半導体でより良い未来を実現する人材育成と研究開発を加速するための日米産学パートナーシップです。マイクロン、米国国立科学財団(NSF)、東京エレクトロンに加え、日米11大学が参画しています。
| 日本側 | 広島大学、東京科学大学、九州大学、名古屋大学、東北大学 |
|---|---|
| 米国側 | ボイシ州立大学、パデュー大学、レンセラー工科大学、ロチェスター工科大学、ワシントン大学、バージニア工科大学 |
Science Tokyoは「UPWARDS for the Future」を通じて、次世代の半導体人材育成と研究開発を推進するとともに、異分野連携を深め、日米の半導体人材エコシステムの創成に貢献していきます。