機械学習で進化する材料探索の新時代

2024年10月29日 公開

人間の経験に頼らない材料選びを実現する、新しいクラスタリング手法の開発

どんな研究?

ものつくりでは、材料物質がどのような特徴や性質を持っているかを把握することが必要です。材料の特性を理解できれば、期待通りに動作する機械や、安全性を確保した製品をつくることができます。適切な材料選びは、製品の性能や品質を左右するのです。これまで、求める特性(たとえば、電気特性、光学特性など)を持った材料を選び出す際は、研究者の経験と直感が頼りでした。しかし近年、機械学習を用いてより効率的に材料探索を行う手法が開発されつつあります。例えば、クラスタリングと呼ばれるデータ分類法は、機械学習の代表的な手法の一つで、材料探索にも応用されています。しかし、専門的な知識をすでに保有している研究者しかこの方法を使いこなせないという課題がありました。

分類された物質のバンドギャップ(横軸)と屈折率の2乗(縦軸)に対する分布。狙い通り類似した特性の物質が同じ物質群になるように分類された。

総合研究院 フロンティア材料研究所の高橋亮助教らの研究チームは、機械学習による物性・機能予測モデルに基づいてクラスタリングを行うことで、専門的な事前知識を必要とせずに、希望する材料物質を探索し分類できる手法を開発しました。

ここが重要

今回開発した新手法によって、1,000種類以上の無機材料データを、欲しいと思う特性に基づいてグループ分けすることが可能であることを研究チームは実証しました。この手法を利用すれば、人間の経験や直感では見出すことが難しい材料物質の共通点を洗い出すことができます。また、材料のふるまいを左右する重要な特性がそれぞれどのような関係にあるかを知る手がかりも得られると期待されています。

今後の展望

高橋助教らの研究チームは、すでに約10万におよぶ物質の電子・光学的な特性を評価した大規模な計算材料データベースを保有しています。今後は、このデータベースと今回開発された手法を用いて、半導体材料や光学材料の設計のための指針を提案していく予定です。

研究者のひとこと

この研究では、機械学習による物性・機能予測モデルに基づいてクラスタリングを行うという新たなアプローチにより、求める機能によって未知の材料候補群を分類できることを示しました。本研究チームが保有している計算材料データベースと本手法を合わせることで、半導体材料や光学材料の設計のための指針を提案できると期待されます。

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