太鼓腹の人はコロナに要注意?

2025年2月14日 公開

新型コロナウイルス感染症での重症化予備軍を見つけ出す重要な手がかりを発見

どんな研究?

近年、世界的大流行を引き起こした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では肥満者が重症化するケースが多いことが指摘されてきましたが、そのメカニズムは不明のままでした。

大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学分野の保田晋助教授と細矢匡准教授率いる研究チームはその謎を解き明かすため、まず、過去の患者データを解析しました。すると、COVID-19の入院患者の場合、一般的な肥満の指標であるBMI(Body mass index)や皮下脂肪ではなく、内臓脂肪(臓器の周りにつく脂肪)の組織面積が大きいほど重症度が高く、亡くなる方が多いことがわかりました(図1、図2)。

図1:東京医科歯科大学病院(現・東京科学大学病院)におけるCOVID-19患者の匿名化した過去データを用いた分析
図2:内臓型肥満と皮下脂肪型肥満の違い

保田晋助教授らは、肥満がCOVID-19の重症化に関わるメカニズムを知るために実験的に肥満状態を作り出した2種類のマウスを用いて研究を行いました。一方は内臓脂肪が蓄積しやすい「内臓型」肥満マウス、そしてもう一方は皮下脂肪が蓄積しやすい「皮下脂肪型」肥満マウスで、肥満の状態がそれぞれ異なります。これらのマウスと非肥満マウスに新型コロナウイルスを感染させ、その影響を調査したところ、非肥満マウスや皮下脂肪型マウスが生き残ったのに対し、内臓型肥満マウスは感染後すぐに死亡することがわかりました。しかも、内臓型肥満マウスの体内では病原菌に対する過剰な防御反応が起こった結果、炎症レベルが高い状態(サイトカインストーム)となり、重篤化の原因となっていることもわかりました。

そこで、内臓型肥満マウスにホルモン処理を行い、肥満を予防したところ、生存率が改善し炎症レベルも低下したことから、内臓脂肪の蓄積がサイトカインストームの原因であることもわかりました。

ここが重要

今回の研究は、日本人の患者データを使って、内臓脂肪量とCOVID-19重症化との関連性を初めて示しました。さらに内臓脂肪が多い人はサイトカインストームを生じる可能性が高いことが示され、重症化予備軍の同定にも役立つと期待されます。

今後の展望

今回の研究手法はコホート研究とよばれるもので、特定の集団(コホート)を一定期間追跡し、ある要因(たとえば、生活習慣、環境、治療など)が健康や病気の発生にどのような影響を与えるかを調べる疫学研究の手法です。本研究は、過去のデータを使った“後ろ向きコホート研究”ですが、今後は、研究開始時にある特定の集団を選び、その集団の将来の健康状態を追跡する“前向きコホート研究”も行われることが期待されています。

研究者のひとこと

保田晋助教授
COVID-19の重症化リスクと内臓脂肪量の関係がわかったことで、健康的な生活を送るモチベーションの1つとしていただければ嬉しいです。

保田晋助教授

細矢匡准教授
健康的なライフスタイルには多くのメリットがあります。まだまだいろいろな感染症が流行していますが、負けずに立ち向かっていきましょう。

細矢匡准教授

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