触媒の力で化学反応を効率化、医薬品と新素材開発に大きな可能性

2024年12月6日 公開

化学反応の未来を切り開く:五員環分子を簡単に作り出す新技術を開発

どんな研究?

化学の分野では、医薬品や新しい材料を効率よく作るために、複数の化学物質を結びつけて目的の物質をつくる方法が研究されています。特に「多成分反応」と呼ばれる方法では、3種類以上の原料分子を一度に反応させて新しい分子を作り出すことができ、しかも、膨大な数の分子を短時間で作ることができます。これにより、新しい薬だけでなく、たとえば半導体の材料や、化学反応に必要となる触媒などの機能性材料※用語1を新たに探すために非常に役立ちます。

物質理工学院の田中健教授らの研究グループは、3種類の異なる化学物質を室温で混ぜるだけで、5つの原子が輪になった構造(五員環)をもつ特定の分子を作り出す新しい方法を発見しました。この方法では、「触媒(しょくばい)」と呼ばれる物質を使います。触媒は化学反応を促進する役割を果たしますが、反応の後でも消費されずに残るため、繰り返し利用できる特別な物質です。この触媒の働きによって、反応はより効率的に進み、狙った形の分子を高い精度で作り出すことができます。

ここが重要

これまでの研究では、似たような方法を使って、6つの原子が輪になった構造(六員環)をもつ分子を作る反応は広く知られていました。しかし、5つの原子が輪になった構造である五員環を作るのは難しく、特に3種類の異なる材料を使ってこれを達成する方法はほとんどありませんでした。
なお、今回の研究では、金属触媒の一種である「ロジウム触媒」を使っています。それによって、五員環の分子を正確に作ることに成功しました。

今後の展望

五員環を含む化合物は、医薬品の特性を向上するものとして期待され、注目されています。今回の研究成果は、特に医薬品の開発に大きな影響を与える可能性があります。今回の研究によって五員環を生成できるようになったことで、新しい薬を生み出す可能性があります。
また、医薬品以外の分野でもこの反応をさらに応用することによって、多様な分子を作り出す技術が進展する可能性があります。その結果、社会全体で多くの新しい発見や技術革新が生まれることが期待されます。

研究者のひとこと

今回、わたしたちが開発した手法は、新たな薬の候補となる化合物が約50種類も精密に作り出すことができました。今後は、新たな薬を生み出すために必要な材料物質を意図したとおりにつくりだすことに大いに役立つと期待しています。また、創薬分野に限らず、その他の幅広い分野にも応用可能なので、今後の応用のしかたについて研究を重ねていく予定です。


用語説明
※ 用語1. 機能性材料:特定の機能や特性を持つ材料のことで、その特性を活かして特定の用途や技術的な目的に使われる材料です。

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