2024年度 東京科学大学 学位記授与式 学長式辞(湯島キャンパス)

2025年3月31日 公開

2025年4月11日 更新

3月25日に湯島キャンパスで挙行した2024年度東京科学大学学位記授与式の田中雄二郎学長の式辞は、以下のとおり学士課程は日本語で、大学院課程は日本語と英語で行われました。

学士課程

卒業生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。皆さんの努力と成果を心から称え、またご家族や関係者の皆様にも深く感謝申し上げます。

今日の卒業式は、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、新たに誕生した「東京科学大学」の最初の卒業式であるということです。

卒業式、学士という学位を授与するという意味で学位授与式ともいいます。皆さんは英語では何というか知っていますか?
Commencement Ceremonyといいます。Commencement、即ち始める、次の人生を始めるという意味です。全く観点が違いますね。

日本語のように過去を振り返り区切りをつけることも、私は、勿論重要なことだと思います。過去を振り返ってみましょう。
医学科、歯学科の皆さんは、その在学中に新型コロナウイルスによるパンデミックが始まり、学生としても未曾有の困難に直面したと思います。
保健衛生学科、口腔保健学科の皆さんは、入学前からパンデミックの影響を受け、入試や学業に多くの苦労を重ねてきたことでしょう。しかし、現在では治療法やワクチンの進歩により、コロナウイルス感染症はインフルエンザと大差ないものになりつつあります。前向きに考えれば、この経験を通じて皆さんは人類が変化に適応する力を持つことを実感したのではないでしょうか。
この教訓は特に医療系学部に身を置いた皆さんが共有できるものです。

ではCommencement、即ち未来に目を向けてみましょう。
皆さん自身も大きな変化を前にしています。即ち、皆さんの多くは、4月からは社会人1年生であり、多くは今日の医療に携わることになります。当面は、慣れないことも多く、「不甲斐ない」と思うことが多いのではないかと思います。しかし、それを失敗と捉えるのではなく、環境への変化、即ち進化のプロセスと考え試行錯誤を恐れず個人としてのチャレンジを続けてください。

東京科学大学の理念は、「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」というものです。この理念のもと、私たちは新しい大学を共に創り上げていきます。皆さんがこれから歩む人生100年時代には、リスキリングやスキルアップを必要とする時が必ずあります。母校である「Science Tokyo」は、皆さんにとって母なる港、母港でもあります。船が母港で整備を終え、長い航海に出ていき、そして次の航海に備えるために戻ってくるように、皆さんもこの母港から新たな挑戦に旅立ち、必要な時には再び戻ってきてください

慣れ親しんだ名前が変わって帰ってくる場がないような気がするかもしれません。しかし、この地に母港があることに変わりはありません。母校はより大きくなり、多様な見識を持つ仲間が増えました。皆さんは、社会に出て多くの気付きを得ると思います。その時、テクノロジーの力を借りれば解決できるのではないかと思ったら是非、母校、母港に立ち寄ってください。実際、スティーブ・ジョブズは“the biggest innovations of the twenty-first century will be the intersection of biology and technology.” つまり、21世紀最大のイノベーションはバイオロジーとテクノロジーの交わるところに産まれると言っているのです。
 
皆さんは、統合が最終年度だったため在学中に理工学の存在を感じることは少なかったと思います。是非、大学院の道を考えて教務課を訪ねてください。そして、大学院における研究で、新たな価値を創出し、明日の医療にも貢献してください。その他にも、学び直しが必要となった時には、ぜひ母校に戻り、さらなる挑戦を続けてください。

最後に、教職員一同、皆さんの幸せな未来を心より祈念し、改めてお祝いの言葉といたします。本日は誠におめでとうございます。

大学院課程

本日、東京科学大学大学院修士課程、博士課程の学位を取得された皆さん、誠におめでとうございます。この成果は皆さんの努力と、指導教員、ご家族、友人その他の方々のお力添えによって達成されました。入学以来、変わらぬご支援をいただきました関係者の皆様に、心よりお礼申し上げます。

To all those who have earned their master’s and doctoral degrees from Institute of Science Tokyo today, my heartfelt congratulations on your graduation. I sincerely commend your efforts and achievements, and I am deeply grateful to your families and all those who have supported you.

I will now deliver the President's address first in Japanese, and then in English.

医療系大学院の最終目標は、優れた研究成果を上げるとともに、その成果を社会に還元することにあります。大学病院における診療はその直接的な表現ですが、それに留まりません。産官学連携による人材開発や研究の社会実装は、より大きな社会貢献をもたらすものと考えています。

修士課程修了の皆さんは、これから社会で活躍する人、博士課程に進む人、アカデミアで研究を続ける人など、それぞれの道に進まれることでしょう。どの道に進まれても、東京科学大学での研究経験を活かし、リサーチマインドを磨き続けていただきたいと思います。

博士課程修了の皆さん、博士という学位は、自ら課題を発見し、それを科学的に解決できる独立した研究者であることを証明するものです。コロナ禍の影響で十分な研究生活を送れなかった方もいるかもしれませんが、過去を悔やむのではなく、そこから教訓を見出し、未来を見据えていただきたいと思います。

全ての修了生の皆さん、人生100年時代において、新たな機会の創出こそが重要です。日進月歩の医学の世界では、質の保証された形での学び直しがますます重要となっています。

東京科学大学は、医歯学系および理工系学部を有する自然科学系総合大学として、多彩な見識を持つ仲間とともに新たな価値を創出する場となりました。私たちは、さらに大きな飛躍を期して全学の改革に皆で力を合わせて取り組んでいます。

スティーブ・ジョブズは“the biggest innovations of the twenty-first century will be the intersection of biology and technology.” つまり、21世紀最大のイノベーションはバイオロジーとテクノロジーの交わるところに産まれると言っているのです。

この意味でも、本学が皆さんの学びなおしの場あるいは研究の継続の場としての価値がますます増大すると確信しています。

皆さんにとって、当大学は生涯にわたる学びの母校であり続けます。名前や組織が変わっても、この地に皆さんの母校があることに変わりはありません。

教職員一同、皆さんの幸せな未来を祈念しつつ、お祝いの言葉といたします。本日は誠におめでとうございます。


Graduates, once again, my heartfelt congratulations to you all.

The ultimate goal of a graduate school of medicine and dentistry is to produce excellent research results and then give back those achievements to society. The direct expression of this is medical and dental care at a university hospital, but it does not stop there. I believe that human resource development and implementation of research through industry-government-academia collaboration bring about even greater societal contributions.

To our master’s graduates, whether you pursue careers in industry, continue your doctoral studies, or remain in academia, I hope you will continue to refine the research mindset you cultivated here.

To our doctoral graduates, your degree certifies you as an independent researcher capable of identifying and solving problems scientifically. While some of you may have faced challenges during the COVID-19 pandemic, I encourage you to learn from those experiences and look to the future.

In this era of 100-year lifespans, continuous learning is essential, especially in the rapidly advancing field of medicine. As a university now with both medical and engineering faculties, we offer opportunities to create new value through interdisciplinary collaboration. As Steve Jobs once said, "the biggest innovations of the twenty-first century will be the intersection of biology and technology." We are confident that our university will be a valuable place for your lifelong learning and research.

The entire staff and faculty wish you all the best for the future. Congratulations to you all.

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