強度近視患者の失明リスクを人工知能で予測することに成功

2025年1月17日 公開

リスクの高い患者を判別し、早期診断・早期治療につながる技術

どんな研究?

近視は手元のノートなどの近くのものがはっきり見え、黒板など遠くのものがぼやけて見える目の状態です。コンタクトレンズや眼鏡などで矯正することができますが、進行すると「強度近視」と呼ばれる深刻な状態になります。さらに、強度近視が原因で眼底に近視性黄斑性*用語1などの異常が起こると「病的近視」と呼ばれ、失明の原因となることがあります。2050年までには全世界の約半数が近視に、約1割が強度近視になると予測されており、世界的な問題となっています。

さまざまなタイプの近視性黄斑症を示す眼底写真

失明を防ぐためにも、強度近視患者の長期的な視力の変化や視力障害のリスクを知ることは重要です。今回、大学院医歯学総合研究科 眼科学分野の大野京子教授率いる研究チームは、人工知能(AI)を用いて、強度近視患者の長期的な視力障害リスクの予測を行いました。

ここが重要

大野教授らは2011~2021年に旧東京医科歯科大学で眼科的検査を施行した患者の臨床データから、967例(1616眼)の患者情報を抽出し、一般情報、基本的な眼科情報、眼底写真と近視性黄斑症のリスク情報を含む34のデータを元に複数の機械学習モデル*用語2を作成しました。これらのモデル同士の予測成績を比較することで、より精度の高い学習モデルを開発しました。この開発したモデルを用いて、高度近視患者の3、5年後といった長期的な視力と、視力障害の発生リスクを正確に予測することに成功しました。さらに、得られた結果をもとに、リスク状況を簡単に可視化できるツール(ノモグラム)の開発にも成功しました。

今後の展望

強度近視患者の失明リスクの予測が可能になったことで、患者の不安の軽減や早期診断・早期治療などに貢献すると考えられます。

研究者のひとこと

本研究は、高度近視患者の長期的な視力や視力障害リスクを高い精度で予測する機械学習モデルを開発した最初の報告です。近視は特に日本を含む東アジアで患者数が増加しています。本研究が患者さんの不安の軽減や適切な予防・治療につながることを期待しています。

大野京子教授

用語説明
※ 用語1. 近視性黄斑性:ものを見る際に重要な網膜の中心にある黄斑部に起こる障害。黄斑に穴が空いたり、出血が起こったりなど、いくつかの原因がある。
※ 用語2. 機械学習モデル:大量のデータをコンピュータに学習・解析させることで導き出したプログラム。未知の情報を入力すると、コンピュータが自ら判断し、適切な回答を出力することができる。

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